【鈴木さん(右)と滞在先の近所の子ども、羊(本人提供)】

 三重県名張市赤目町柏原出身の鈴木朱音さん(22)が、スイス北東部の町アルトシュテッテンで、畜産や果樹栽培を組み合わせた「複合農業」を学んでいる。現地の農家にファームステイしながら働き、「食と農をつなぐ架け橋になりたい」と、日々汗を流している。

 津西高を卒業後、香川大学農学部で食品科学を学んだ。大学3年の時にマレーシアへの短期留学を経験したことで、「海外で挑戦したい」との思いが強まったという。消費者目線ではなく、第一次産業の現場を知りたいと考え、海外農業研修プログラムへの参加を決意。ドイツ語を学び、面接を経て、今年4月からスイスでの生活を始めた。

多くの羊が放牧されているコブラーさんの農場(本人提供)

 現在暮らす7人家族のマルクス・コブラーさん(49)方の農場では、鶏20羽、豚20頭、牛30頭に加え、羊約600頭を飼育。夏には洋梨やサクランボ、プラムなどの果樹栽培も行う。家畜のふんを肥料として畑に還元し、その土で次の作物を育てる循環型農業が特徴で、収入の安定やリスク分散、資源の循環利用を図っている。

感謝の気持ち深まる

 現地では、命と食の距離の近さにも驚かされた。農場ではコブラーさんの長男(20)が一人で家畜の解体を担う。鈴木さんは「血が怖くて最初は近づけなかった」と苦笑する一方、「命を頂いているのだから、きちんと向き合えるようになりたい」と話す。

 食に対する考え方にも変化があった。コブラー家では誰も食べ物を残さず、皿に残ったソースまで奇麗に食べ切るという。鈴木さんも自然と最後の一口まで大切に味わうようになり、「食べ物への感謝の気持ちが、以前より強くなった」と実感している。

 一方で、異国での生活に戸惑うこともあった。スイスでは過程より結果が重視されるため、「頑張っているのに評価されない」と悩んだ時期もあったという。来たばかりのころは、自分より年下の少年たちの自立した姿に圧倒され、「比べてしまってしんどかった」と振り返る。それでも、自ら考えて行動することを意識するようになり、「できなかったことができるようになるのが楽しい」と前向きに語る。

 また、現地では知らない人同士でも「Hoi(やあ)」と気軽にあいさつを交わす文化があり、人の温かさにも支えられている。「重い牧草を運べない時、ファミリーが自然に手伝ってくれた。周囲の優しさを感じる毎日」と笑顔を見せる。

休日にコブラーさん家族とハイキングを楽しむ鈴木さん(手前)(本人提供)

「学んだこと、日本へ」

 子どものころに所属した名張剣道スポーツ少年団で培った粘り強さも、海外生活の支えになっているという。そして、「アクティブでボランティア精神旺盛な父の背中が、海外へ踏み出す力をくれた。母にたくさん愛してもらったから、人の愛を素直に受け取れる」と両親への感謝を語る。

 農家の苦労や食の大切さを日々実感している鈴木さん。「スイスで学んだことを日本へ持ち帰り、子どもたちにも農業の楽しさや食べることの大切さを伝えたい」と展望を語った。

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