【創業10年を迎え、「共に生きる100年後の未来」を掲げる宮本代表(提供写真)】
「本当は、医療や介護サービスを利用しなくてもいい社会が理想」。そう語るのは、訪問看護や訪問リハビリテーション、デイサービスなど三重県伊賀地域で2拠点5サービスを展開し、従業員68人を抱える株式会社メディソップ(本社・名張市東町)の宮本勝行代表(45)だ。ビジネスの拡大を担う経営者の言葉としては一見矛盾しているようにも聞こえるが、その思いこそ宮本代表の原点だ。
「サービスを受けずに済ませよう、という単なる『予防』の話ではない。支援を受けている側、あるいは自分は弱者であるという『メンタリティ』そのものをなくしたい。支援する側とされる側、高齢者と若者。その間にある『境界線を溶かす』ことに弊社の存在意義がある」。本社2階の一室で、宮本代表は熱を込めて語った。
「確かに、身体や言葉に不自由がある人は、日常に多くの『不便』を抱えている。それは事実としての弱者かもしれない。でも、不便だからといって、その人の人生が『不幸』なわけじゃない。周囲が勝手に『不幸な人、かわいそうな人』などと決めつけてレッテルを貼ることが、僕はたまらなく腹立たしい。人が前を向く力を、社会の『目』が奪ってはいけない」
同社は今年、創業10年を迎えた。訪問看護リハビリステーション、デイサービス、居宅相談支援を展開し、今夏には市内でフィットネスジムを開設予定で、介護予防分野にも事業を広げる。
宮本代表は伊賀市出身。自然に囲まれて伸び伸びと育った一方、幼少期は睡眠中に強い恐怖や混乱が起きる重度の夜驚症に悩んだという。「自分でコントロールできない不便さや孤独感を、身をもって経験した原体験があったからこそ、他者が抱える目に見えない生きづらさや痛みに敏感になれた」と話す。
「管理」から「生活」に 起業へ
大学卒業後は言語聴覚士(ST)として地元の総合病院や大阪の病院で勤務した。
「患者という枠に押し込められ、病気や障害を理由に『箱の中』で管理される。長引く治療の中で、表情から活気が失われていく人たちを見て、『ここは本当の生活を取り戻す場所ではないのではないか』という強い違和感があった」
その後、大学病院で小児領域を学び、在宅ケアの世界で経験を積んだ。2016年1月に地元へ戻り起業。同年4月に「訪問ナース・リハビリステーションあゆみの」を開設した。
創業メンバーは看護師3人、セラピスト2人の計5人だった。
「誰か一人でも欠けたら事業が止まるという極限状態だったが、地域に寄り添い、ご利用者一人ひとりの『人生の歩み』に徹底的に伴走した。現場では、どれほど不便を抱えながらも冗談を言い合い、日々を懸命に生きようとするご利用者たちの姿から多くのことを学ばせてもらった」
ニーズの高まりを受け、訪問看護に加えデイサービスなどへ事業領域を拡大。創業から10年を迎えた今、同社は「共に生きる100年後の未来」を掲げる。
境界線を溶かす「場」に
「病気や障害を持っても、人は決して不幸じゃない。けれども、人は一人では弱い。どんなに強い人にも、誰かの存在や自分の弱さをさらけ出し、その人らしくいられる『居場所』が必要だと思う。そんな場所を、僕たちの手で作れたら」
今夏、イオン名張店(元町)内に開設予定のフィットネススタジオ「ケアーズ」は、宮本代表のその思いを一つの形にしたものだという。
買い物のついでに誰もが立ち寄れる場所で、コンセプトは「ゆるく、ダサかっこいい、ダサかわいい」。宮本代表は「若者も高齢者も、ちょっと不自由を抱える人も、自分の不格好な部分もさらけ出して同じ空間でゆるく健康づくりができる。一人の人間として心地よく混ざり合える、ちょっと肩の力が抜けたフラットな場になってくれれば」と語った。


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