【出版した書籍の前編と後編を手にする蓬田さん=名張市で】

 58歳で倒産寸前の会社に入社。そこは借入21億円、不渡り寸前の現場だった―。定年を目前に、「このまま終わっていいのか」という思いで転職した、三重県名張市百合が丘西の蓬田一範さん(66)が、「桐谷悠」のペンネームで執筆したノンフィクション「破綻寸前からの挑戦‐倒産寸前の工場を救ったひとりの財務マンの物語‐」(前・後編)を昨年12月と今年2月に出版した。

 蓬田さんは高校を卒業後、会計事務所に勤務。その後、広告代理店や製造業の財務部門で資金繰りや金融機関との交渉に携わってきた。定年の60歳が近づく中、「もう一度、誰かの役に立つ仕事がしたい。経験を使い切るような最後の挑戦がしたい」という思いが強くなっていった。

 そんな中で見つけたのが、「財務業務を中心とした社長補佐」の求人。会社の詳細の内容を知らないまま入社したが、出社初日に違和感を覚える。決算書や試算表といった経営判断に必要な「数字」が社内に存在せず、情報が共有されていなかったのだ。

正解ない判断の連続

 「何か一つでも見えるようにすればいいのではないか」。そう考え、現場に入り込みながら企業再生に取り組んだ7年間。その中で経験したのは、計画通りには進まない現実と、正解のない中での判断の連続だった。

 退職後、その体験を記録として残すために執筆に取り掛かり、約4か月で書き上げた。「この本は決して成功談ではない。数字と現実に向き合い続けた7年間の記録」とも記されている。

 動画投稿サイト「ユーチューブ」の自身のチャンネルでは、書籍の内容を基にした動画も発信しており、「会社は気付かないうちに少しずつ崩れていく。その現実を知るきっかけになれば」と語る。

 「苦境に立たされた時に必要なのは、助言をするだけの存在ではなく、同じ時間軸で現実を共有し、判断の重さをともに引き受ける〝同走者〟。企業再生は遠い世界の話ではなく、経営に関わる人、重要な判断を担う立場の人たちが、何かを考えるきっかけになれば」と思いを語った。

 書籍は四六判で、前編146ページ、後編163ページ。アマゾンで購入可能で、ペーパーバック版は前・後編とも税込み1冊1815円、キンドル版は前編480円、後編960円。

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