【竹がシャベルを持ち上げた現場を紹介するメンバー=名張市滝之原で】

 三重県名張市滝之原の竹林で、2年前に置き忘れられたシャベル。今春、竹が約2メートルの高さに持ち上げているのが見つかった。

 この竹林は、地元を拠点に活動する竹灯り作家5人グループ「竹雀」が、地主の協力を得て作品づくりに使う竹を採取している場所の一つ。2020年春、メンバーが孟宗竹を切りに訪れた際、偶然タケノコを見つけ、「ついでに」と、竹林の物置に置いていた長さ約1メートル、重さ約1・5キロのシャベルを使って掘り起こした。

 タケノコはその後、家で煮物などに調理して味わったが、使ったシャベルは「誰かが元に戻しただろう」とおのおの思い込み、竹林に置き忘れられてしまったという。

 「え、ちょっと待って」――。22年春にメンバーが再びこの竹林を訪れた際、目を疑う光景があった。シャベルが地面と水平に近い状態を保ちながら、竹によって高々と持ち上げられていたのだ。

 持ち手部分の輪の中にタケノコが生え、ニョキニョキと成長するうちにシャベルを持ち上げたものとみられる。竹は既に成長しきっていたようで、高さは約10メートルになっていた。

シャベルの持ち手部分=同

 共同代表兼デザイナーの福岡広志さん(36)は「竹林とは言え、シャベルの輪の中に偶然生えるとは奇跡的だ」と驚く。福岡さんらはこの出来事を、お笑いトリオ「ネプチューン」が司会を務めるテレビ朝日系人気バラエティー番組「ナニコレ珍百景」に応募。登録され、6月に全国放送された。

 メンバー内では「シャベルを付けたまま光らさなあかんな」と、竹を今後、作品化する案が出ているという。福岡さんは「年内か来年には切り出し、多くの人に見てもらえるオブジェにしたい。生命力を感じられる作品になるはず」と意欲を語った。

2022年8月27日付826号1面から

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