【新調された水引幕「西園雅集図」を眺める中村会長(奥)ら=伊賀市上野福居町で】

 三重県伊賀市で毎年秋に行われる「上野天神祭のダンジリ行事」(ユネスコ無形文化遺産)で市街地を巡行する9基のだんじりのうち、上野福居町が所有する「三明」に取り付ける4枚組の水引幕「西園雅集図記」のうち前水引幕「西園雅集図」がこのほど新調され、3月12日に祭礼関係者や地元住民らに公開された。

復元新調された幕(上)と復元前の幕(下)

 だんじり巡行などに携わる上野文化美術保存会や市文化財課などによると、「三明」と同じ1825(文政8)年に製造されたと伝わる水引幕は、笛方や囃子(はやし)方が乗り込む「囃子座」部分の四方を飾るもの。同町は「西園雅集図記」と、その約20年後に製造された「三十六歌仙図」の2種類を所有しているが、いずれも経年劣化による損傷が進んでいた。

 同祭で巡行するだんじりの幕の復元新調は6例目で、文化庁や県、市の補助を受けて2019年度から進められ、同祭復元修理事業等審議会委員の助言・指導のもと、京都市内の専門業者が実施。原品調査を基に、図案作成、試作、本体刺繡(ししゅう)などの工程を経て、3月中旬に完成した。

2019年の神幸祭で菅原神社付近を進むだんじり「三明」。囃子座部分には「三十六歌仙図」が飾られている

 同祭は過去2年、新型コロナの影響で、だんじりや鬼などの供奉行列が行われていないが、同保存会の中村晶宣会長は12日の完成披露会場で「コロナ禍で祭り自体が停滞している中、幕が新調できたのは奇跡的なこと。この幕を付けただんじりを皆さんに見てもらえるよう、今年は通常通り開催したい」とあいさつした。

 新調された幕と組み合わせる残り3枚の水引幕は金糸で漢詩をつづったもので、こちらも今後、復元新調される予定だという。

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