【大阪出店の思いを語る社長の中西さん=伊賀市で】
「Pele」社長・中西さん 未来への挑戦
「伊賀から日本へ、日本から世界へ」――。三重県伊賀市上野西町で美容室を運営する株式会社Pele(ペレ)の代表取締役社長で美容師歴25年の中西健志さん(42)が今冬、大阪市内に新店舗を出店する。地方の美容室が直面する人材不足や働き方の課題に向き合い、美容業界全体の底上げを図る。挑戦の原点は「伊賀への思い」だという。
中西さんは大阪府出身。高校卒業後、通信教育で美容師資格を取得した。大阪で約10年間経験を積み、その後は米国で2年間活動。さまざまな髪質を持つ人々のスタイリングを学びながら、世界4大ファッションウィークの一つ「ニューヨークコレクション」の現場にも参加した。
転機は2014年。帰国の際に独立の地に選んだのは、祖父母が暮らす伊賀市だった。「積み重ねた経験をどこで生かすべきか。真っ先に浮かんだのが伊賀だった」と振り返る。
ハワイの火の女神「ペレ」と「兄弟」を掛け合わせて命名した「Pele+bro.(ペレブロー)」を上野東町に開業し、3年後に法人化。23年7月に現在の上野西町へ移転した。
地域に根差し、一人ひとりの顧客と向き合い続けた13年は、「伊賀という土地に育てられた時間でもあった」という。「当初は不安もあったが、今はこの街で挑戦できることが誇り」と語り、子どもの成長や家族の節目など、日々の施術の中での出会いの積み重ねが土台になっているという。
近年、美容業界では廃業件数の増加が続き、とりわけ人材確保が課題となっている。地方の美容室も例外ではない。しかし、中西さんは悲観することなく「都会も地方もやっていること自体は何も変わらない。むしろ地方の美容室の方が一人ひとりのお客さまと向き合う力は圧倒的に高い」と語り、人の温かさや技術力の高さなど、伊賀の底力を強調する。
一方で、「真の競合相手は他店ではなく、待遇の良い一般企業」と指摘。長時間労働や休日の少なさ、賃金水準といった構造的課題が背景にあるという。
待遇面から美容師の道を離れた人材について、「美容師としてもう一回やりたいと思ってもらいたい。『好き』や『やりがい』だけで続けられる時代はもう終わった」と語る。一般企業並みの福利厚生やライフワークバランスの実現を目指し、「働きがい改革」を進めている。

オリジナル商品開発にも
大阪出店は単なる規模拡大ではなく、むしろ伊賀を強くするための一手と位置付ける。新拠点を“電波塔”のような存在にし、最新の情報やトレンドをいち早く取り込み、伊賀へ同時に還元する仕組みを構築する考えだ。「若手美容師が伊賀で人間力を学び、大阪で感性を磨き、再び伊賀へ戻る。そんな循環をつくりたい」と語る。
更に、伊賀発のオリジナル商品「ニホンノオイル」の開発にも取り組む。伊賀の水を使用し、天然由来成分を配合したヘアオイルで、伊賀ブランド認定を目指しており、今後も全国への販路拡大を目指す。
現在は家族を含む6人で運営しており、大阪店開業後も家族が中心となって本店を守る。中西さんは「伊賀で10年以上続けさせてもらった。だからこそ伊賀から何かを発信する意味がある。『地方だから仕方ない』で終わらず、『伊賀だからできる』と言える未来に向けて挑戦していきたい」と語った。













