【昨夏の「乗鞍ヒルクライム」に出場し力走する3556番の吉嵜さん(中央)(本人提供)】

ガレージはトレーニング場に

 「登り切った達成感や迎えてくれる壮大な景色が最高」。還暦を機に、趣味で楽しんでいた大型バイクから自転車に乗り換え、坂道を自力で登る「ヒルクライムレース」に挑んでいる、三重県伊賀市笠部の造園業、吉嵜宗宏さん(62)。6月に山梨県、8月に長野県で開かれる国内大会を目標に、毎日トレーニングを欠かさない。

 20歳で家業を継ぎ、仕事の傍ら、「テレビで見て憧れた」というオフロードバイクに熱中した20代。しばらくすると中型バイクでのツーリングが中心になり、妻・登喜子さん(59)ともツーリングクラブで知り合った。子育てがひと段落してからはカスタムバイクにも興味が湧き、最終的には憧れのハーレーダビッドソンも所有した。

同級生の勧めで

 体を使う仕事のため、体力面や健康面には自信があったが、還暦を迎え、「今のままでは体が動かなくなる」と危機感を抱いていた時、中学時代の同級生からヒルクライムレースへの挑戦を勧められた。一念発起した吉嵜さんは、愛車ハーレーを手放し、まずはトレーニング用マシンを中古で購入。以前はバイク用だった自宅裏のガレージが“トレーニング道場”に変わった。

愛用していたバイクと(同)

 平日は夜に約2時間、アプリを通じてオンラインで集まる全国の仲間とトレーニングを兼ねた模擬レースで競い、休日には自宅から滋賀県境の御斎峠、三国越などを回る約50キロを走るのが定番だ。大会での設定タイムを想定し、「2時間続けて走れるように」と心掛ける。

 昨年初挑戦した大会が、約8000人が集まる国内最大規模の「Mt・富士ヒルクライム」だった。山梨県富士吉田市郊外から富士山五合目に至る富士スバルライン(有料道路)を約25キロ走るコースで、標高差は1270メートル、平均勾配は5・2%。昨年は台数の多さやトップ選手たちの実力に驚かされたが、2時間5分36秒で完走した。今年も6月7日の大会に向け、1時間45分を切るタイムを目指している。

 相棒はイタリア製のロードバイク「コルナゴC68」。両足はペダルに固定されているため、「レース中、気軽に足をついたり休憩したりできない」自分との戦いが続く。大会では転倒や巻き込まれによる負傷も少なくないといい、「安全第一に、とりあえず70歳くらいまで続けられたら」と話す。

「家族の理解と協力に感謝」

 登喜子さんとは国内外への旅行だけでなく、大会の際も一緒に出掛け、レースの日はゴール地点で待っていてくれるといい、「家族の理解と協力に感謝している」。最近では、同じく以前はバイクが趣味だった長男の嘉人さん(29)も自然地形や人工構造物で作られたコースを転倒せず走行できるかを競うトライアル自転車に熱中しているそうだ。 

 8月に長野県松本市で開かれる「乗鞍ヒルクライム」には、昨年に続いてエントリーを予定。国内の舗装道路で最も標高の高い2720メートルの乗鞍高原を目指すレースだ。「自分の力でゴールを目指すヒルクライムレースの面白さを味わうには、年齢は関係ない。多くの人にこの魅力や楽しさが伝われば」と語った。

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