【10月にあった里親会の様子=名張市東町で】

 さまざまな理由で保護された猫の新しい家族を探す「猫の里親会in名張」が、毎月第4日曜に三重県名張市東町の東町集議所で開かれている。最近、地域で保護される猫が相次ぎ、より多くの里親が必要になっているという。一体、何が起きているのか。

 主催者で、保護猫活動を続ける「にゃにゃ倶楽部」代表の村口早苗さんによると、市内で今年6月、高齢夫婦による多数の猫の不適切飼育が発覚した。きっかけは、老夫婦宅を訪問する市包括支援センターから寄せられた情報だった。

 市職員とともに、山近くにある民家を訪れた村口さんらメンバーは、繁殖した十数匹の猫たち、ふん尿が適切に処理されず異臭が近隣まで漂う現場を目の当たりにした。アライグマなど他の野生動物も寄り付き、食いちぎられたのか尻尾が根元から失われたり、脚先の一部が無くなってしまったり、感染症にかかっていたりする猫なども確認された。

劣悪環境下の13匹保護

 老夫婦の餌やりは5年以上前から続いていたといい、与えていたのは山盛りの白飯。成猫に対して子猫の数が少なく、幼いうちに他の動物に捕食されていた状況も推測された。村口さんらは夫婦を説得し、劣悪な環境に置かれた猫たちが安全に暮らせるよう、捕獲機を使って保護を進めた。

 民家と山とを行き来する猫もいたため、捕獲は難航。十数回通い、最後の1匹を捕獲し終えたのは8月下旬で、最終的に保護した数は子猫5匹を含む計13匹だった。治療や寄生虫の駆除の他、去勢や不妊手術など繁殖制限措置を講じた後、猫たちは新しい家族との出会いに向けて里親会に参加した。

尻尾が失われた猫(提供写真)

 里親会に参加する猫の保護経緯は、飼育放棄や迷子、高齢の飼い主が突然飼えなくなったなどさまざまで、老夫婦の事案は一例に過ぎない。野良猫の場合は去勢や不妊手術を施した上で地域猫として元の場所に戻す「TNR活動」も広がっているが、どうしても元の場所に戻せないケースもあり、そんな時はやはり里親を探すことになる。

 東町集議所での里親会には、団体や個人で一時保護されている50匹以上の猫が参加する。このうち、正式譲渡に向けて一定期間、飼えるかどうかを見極めるトライアルに進むのは数匹にとどまる。

 村口さんは「猫は繁殖力が強い動物で、あっという間に増えてしまう。可愛がる前に必ず不妊や去勢手術を受けさせて」と力を込める。猫を飼いたいと考えている人に向けては「ペットショップへ行く前に、保護猫の里親になるという選択肢を考えて頂きたい」と呼び掛けている。次回は11月27日正午から午後3時まで。

 問い合わせは事務局の上田さん(まりこの猫活)(090・7680・1710)へ。

2022年11月5日付831号27面から

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