【「kyucho hotel」を紹介する北森さん=名張市本町で】

 三重県名張市本町の国登録有形文化財「山中家住宅」がこのほど、宿泊施設「kyucho hotel(旧町ホテル)」としてオープンした。大和と伊勢を結ぶ初瀬街道沿いにあり、江戸時代の「嘉永6(1853)年」の銘が主屋の鬼瓦に残っている。

 元々は造り酒屋で、その後旅館「角屋」を営み、幕末には地図作成のために訪れた伊能忠敬の測量隊が分宿したという記録もある。

 同住宅の住民が80代の高齢になって管理維持が難しくなったこともあり、東京の都市計画コンサルタント会社として50年の実績があるランドブレイン株式会社と名張市の旧市街地(通称・旧町)で空き家の利活用を進めている一般社団法人つなぐが昨年11月に共同出資して株式会社kyucho hotelを設立、住宅の管理運営を始めた。

「kyucho hotel」の外観

 ランドブレイン事業創造室の上田宗平さん(40)は「今回とは違う物件だが、3年前に有形登録文化財が売りに出されているのをインターネットで見つけ、もったいないなと思い、調査のために名張を訪れた。その時に、つなぐの理事の方に出会って山中家住宅を紹介されたのがきっかけ」と経緯を話す。

 5年前に設立し、空き家の管理は山中家が4軒目になるというつなぐの理事の一人、北森仁美さん(42)は「山中家の住人のご夫妻は、これまで家具や庭の植木などをきちんと管理されていたが、今後については不安を抱いておられた。旧町は江戸時代から根付いた歴史の深さと魅力にあふれている。この町に『泊まる』という機能を持たせることが必須であり、私たちの使命だと考えた」と話す。

 同施設は740平方メートルの敷地に2棟の主屋が建っており、和室4室とキッチン、居間がある。1棟貸しで、最大8人まで滞在できる。和室のらん間や雪見障子など、日本家屋の趣を残している。

 チェックインは近くにあるつなぐの本拠地である同市元町のコワーキングスペース「FLAT BASE」で行う。そこから同施設まで案内しながら宿泊客とコミュニケーションを取り、要望に応じて旧町に点在する老舗などに立ち寄る。同施設に駐車場は無い。

らん間が美しい室内と北森さん

 現在、旧町には14の登録有形文化財が残っているが、所有者の高齢化、管理コストの増大などにより維持が困難となり、解体や空き家化の危機に陥っているという。

 「こうした課題に対し、今求められているのは、単に保存するためではなく、継続的な利活用や人の流れを生む活用で、旧町ホテルは町の滞在場所として地域の活性化に役立つと考えている」と話す上田さん。

 新会社の社長に就任した北森さんは「旧町のありのままの暮らしの中にある魅力や面白さは、掘れば掘るほど湧いてくる。それを多くの人に伝え、つなぐ役割を担いたい。この町のファンが増え、この町で暮らしたい、遊びに来たい、起業したい人が増え、ひいてはこの町を残したいと思う人が増えることが私たちの願い」と、熱く語った。

 宿泊料金は1泊3人まで2万4000円で、4人目から1人当たり6000円を追加。

 問い合わせは同施設(090・5216・5853)まで。

手入れされた庭
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