【CDを手にする竹森君=名張市新田で】

曲をネット公開 CDも

 三重県立特別支援学校伊賀つばさ学園(名張市美旗町南西原)高等部1年の竹森龍馬君(15)=同市新田=が、「メーロン」の名で作詞活動をしている。難病と闘う先輩へのエールを込めて作った詩を、兵庫県のシンガーソングライターが曲にした。竹森君は「輪(わ)」と名付けてCD化し、インターネットでも公開。「『頑張ろう』という気持ちが輪のように広がってほしい」と願っている。

 幼いころから歌が好きで、童謡やポピュラー音楽など幅広く聞いてきた竹森君。小学校低学年の時、広汎性発達障害(PDD)と診断された。好奇心が人一倍強く、近くのギャラリーに通っては展示作品をまねして紙粘土で造形作品を作るなど、ものづくりに没頭した時期もあった。6年生の時、美旗小の校歌や名張市民の歌の歌詞を手掛けた地元の組みひも作家、中内節さん(故人)に憧れ、作詞に挑戦するようになった。

 初めのうちは、なかなか詩を書けない時期があったが、いつしか「言葉が泉のように湧いてくる」感覚とともに、すらすら作詞できるようになったという。美旗地区の歴史や自然の魅力を伝える詩、家電量販店「ジョーシン」のCMソングの替え歌、自分が通うクラスの詩など、次々に作った。一部はAIを使った自動作曲で曲にし、周囲の人たちに発表した。

 「輪」の詩を作ったのは、中学部3年の時に進行性の難病と向き合う女子生徒と出会ったのがきっかけだった。病に立ち向かう姿に、「応援したい」「支えたい」との思いを募らせた。そんな時、再び歌詞が湧き上がってきた。

竹森君が自作した「輪」のCDと歌詞カード

 「桜が舞う頃、僕は言いました。病に閉ざされた私が居りました」と始まる歌詞は、新田水路の桜並木を思い浮かべた。「僕」と「私」の2人に対し、「あきらめないで」「楽しく生きようよ」「駆けて行こう」といった前向きな言葉で励ます。

 今までにない手応えを感じた竹森君は、インターネット上の掲示板で、自己向上のため何でも作曲する、と呼び掛けていた人にメッセージを送信。相手は曲作りに応じ、歌声も添えられた曲は約1か月後に完成した。想像以上の出来に、うれしさで満たされたという。

 音源は自宅のパソコンでCDに落とし、プリンターで印刷。放課後等デイサービスの職員らに配布し聞いてもらうと、「テレビで流れそうないい曲じゃないか」などと驚かれた。動画投稿サイト「ユーチューブ」の竹森君のチャンネル「メーロンTube」では7月末から公開しており、誰でも聞くことができる。

 作詞活動は、自身の精神的な支えにもなっているという竹森君。「世界中の人が優しく、仲良く暮らし、頑張っていける。そんな気持ちになれるような詩を届けていきたい」と話した。

2022年8月27日付826号2面から

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