【「待ってるよ」と呼び掛ける川上さん(右)と自作の看板を持つ服部さん=伊賀市朝日ケ丘町で】

 不登校の子どもを持つ親らが中心となり、三重県伊賀市朝日ケ丘町にフリースクール「レインボーキッズ」を開設した。伊賀地域初のフリースクールで、学校に行くのが難しい子どもの選択肢を広げ、家族にとっても心のよりどころとなることを目指す。

スクール開設の経緯や思いを話す川上さん=同

 フリースクールは、不登校の子どもに学習支援や体験活動などを行う民間施設。レインボーキッズは、マルシェイベントや子ども食堂の運営などを手掛ける団体「虹のかけはしプロジェクト」の代表で書家の服部朋弘さん(34)と、不登校の娘を持つ川上陽子さん(44)が立ち上げた。県教育委員会が把握している県内のフリースクールなどの民間施設はレインボーキッズを含めて19か所で、これまで伊賀地域には無かった。

不登校の子の親ら開設「学校だけが全てじゃない」

 川上さんの子は4人姉妹で、長女(14)は2年ほど、次女(12)は4年ほど前から不登校になった。次女が不登校になったのはコロナ禍の一斉休校があった小学2年生の時で、学校に行ったり行かなかったりするようになった。

 川上さんは当初、「何で学校に行かないの。行きなさい」と次女を叱ったり、車に乗せて校門まで送ったりした。次女はだんだん、学校に行っても泣いて帰ってきたり、車から降りるのを拒んだりするようになった。

 次女は学校が嫌いなわけではなかったが、「何で」という問いには答えることができず、困った顔をするだけだった。川上さんは「なぜなのか」「どうやったら行くのか」「勉強が遅れるのでは」などと悩み、「子育ての仕方が悪かったのか」と自分を責めることもあったという。「どこに相談すれば良いのか分からず、不安ばかりが募った」と振り返る。

 次女が不登校になってしばらくしたある日、川上さんはどんどん曇っていく次女の顔を見て「このままじゃ、この子を潰してしまう」とハッとした。「しばらく学校、休もっか。行きたくなったら行こう」と声を掛けると、次女は安心した様子で、久々に笑顔を見せた。

 その後、次女は工作や絵描きをしたり川上さんの仕事に同行したり、不登校の子どもを支援する公的機関の伊賀市教育支援センター(上友生)ふれあい教室に通ったりするうち、元気を取り戻していった。フリースクールにも通いたかったようだが、近くに無いため選択肢に入らなかった。

 川上さんとイベントを通じて2年ほど前に知り合った服部さんには、フリースクールを運営する知人がおり、「伊賀にもフリースクールが必要」という川上さんの思いに共感。昨年秋から準備を進め、今年4月に開設が実現した。

元気な心が大事

 川上さんは「学校だけが全てじゃない。大人だって疲れたら休むし、合わなかったら転職したりする。学校になじめる子は良いが、そうじゃない子もいる。無理して病むより、心が元気なままの方が大事」と話す。

 レインボーキッズは、近鉄伊賀神戸駅から近い住宅地にある平屋一戸建てを活用している。スタッフは現在、服部さんと川上さんを含めて3人。利用人数は1日10人程度を想定する。

 対象は小学1年生から高校3年生で、入学金5万円、利用料は月1万円から2万5000円。勉強の時間も設けるが、無理には勧めない。調理実習や遠足なども計画している。

 服部さんは「伊賀のフリースクールはゼロから1になった。どんな子どもにも活用してもらえる居場所として、作っていきたい」、川上さんは「親もいろいろ悩むもの。今までの経験を生かして、相談相手になれたら」と話した。

 問い合わせは、スクールのインスタグラム(@rainbow_kids2404)または服部さん(070・9145・0723)へ。

不登校の小中学生 伊賀地域に300人超

 文部科学省の調査になどよると、2022年度の全国の小中学生の数は約944万人。このうち不登校の子どもは29万9048人(前年度比22・1%増、過去最多)で、4割が学校内外で相談を受けていないという。

 県内における不登校の小中学生の数は3958人で、伊賀市内は139人、名張市内は170人。県は今年度の当初予算で、フリースクールなどで学ぶ子どもへの支援を新たに盛り込んだ。

 レインボーキッズの開設について、伊賀市教委の担当者は「設置頂いたことは、大変意義深い。可能な限り連携を取りたい」と話した。

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