【店舗前に立つ藤林さん】

 三重県伊賀市西湯舟の「忍法帖料理・藤一水」の店主、藤林孝行さん(67)は36歳の時、現在地に忍者料理専門店を創業した。伊賀忍者三上忍の一人・藤林長門守を先祖に持つ。

 父が営んでいた鮮魚店で働いた後、大阪の日本料理店で修業し独立。「忍者の里である伊賀の地に、専門店を作りたかった。当たるかどうかは不安だった」と、当時の心境を語る。

考案した忍者メニュー

 創業に当たり、「萬川集海」などの忍術書を読みあさり、忍者の生活や嗜好を徹底的に勉強。食事については、戦国時代に当時の農民が食べたと思われる食材、忍者が食べた食材や携帯食などで、文献にないものは想像しながらメニューを考えたという。

 「忍者料理のこだわり」について、藤林さんの自筆の品書きに「忍者は体重が重くならないバランスのとれたヘルシーな食事をしていた」とし、「大豆食品の豆腐や鹿肉などでたんぱく質、カルシウム、鉄分を採り、ビタミンは柿などで補っていた」と記している。

 また忍者が任務に出た時は、バッタやタンポポ、ヨモギなどを食し、兵糧丸やヒシの実、ズイキの干しものなどを携帯食にしていたという。本物志向を掲げる当店だが、食材やメニューは現代人が好むようにアレンジし工夫している。

 昼の看板メニュー「忍者めしランチ」(1480円から2200円)は、地元のブランド・伊賀牛を自身で焼いてもらい、黒米をブレンドした伊賀米のご飯を土鍋で炊いてもらう。豆腐のグラタン、「水蜘蛛の術」を表す淡雪を浮かせた吸い物、「うずら隠れの術」にちなんでうずら卵もある。そこに梅干し、黒豆、黒ごまなど、ヘルシーで栄養満点の素材をあしらっている。

 夜の懐石料理も人気だ。メニューの色彩、手裏剣の形をした容器、ドライアイスを使った煙の演出など、驚きを引き出す〝技〟も多彩だ。店内には「からくり屋敷」があり、隠し扉、どんでん返し、鳴子などの仕掛けや親子で遊べる手裏剣道場もある。

 「当店を選んでいただいたお客さまの期待に応えたい。そのための演出を考えるのが私の仕事」と話す。「『お客さまに飽きられたら飲食店は終わり』と、父から教えられた」と言い、時代の変化に乗り遅れないようメニューの改善を考える毎日だ。

 コロナ禍で客足が激減した際には、予約のない客にも対応したが、客も戻り経営的な判断もあって、今は以前のような予約客を主に営業している。

 法事や地域の寄り合いの場としても利用されており、旅行会社と連携しインバウンドの取り込みなどで来店促進を図っている。「地元の食材を使い、来店客を増やすことで地域の活性化に貢献したい」と話す。

 今後について、「倒れるまで現役を続けるつもりだが、いずれは次の世代に継いでもらい、忍者料理専門店を続けてほしい」と話している。

 問い合わせは同店(0595・43・1089)まで。

2026年1月10日付907号4面から

店内の「からくり屋敷」
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