【飛散予想の資料を手に説明する福喜多院長=名張市鴻之台3で】

 「眼球を取り出して洗いたい」「ティッシュが24時間手放せない」、そんな悲鳴が上がる花粉症。つらさを回避するためにはどうすべきか、福喜多耳鼻咽喉科(三重県名張市鴻之台3)の福喜多晃平院長(42)に話を聞いた。

花粉症とは

 花粉症は、主に植物の花粉に対する過敏な反応が引き起こすアレルギー性疾患で、特に春はスギやヒノキなどの花粉で引き起こされる。1960年代に報告され、今では国民の約半数が罹患しているとされている。

 花粉症の人の体では、花粉が呼吸器や目に触れると免疫系が異物とみなし、過剰な反応を引き起こす。典型的な症状は、くしゃみや鼻水、鼻詰まり、目のかゆみ、喉の痛み、発熱などがある。症状は個人差があり、中には日常生活に支障をきたしたり、睡眠障害を引き起こしたりすることもある。

伊賀地域での飛散

 代表的なスギ花粉は、飛散が多い年と少ない年とを交互に繰り返す。昨春は、過去40年で観測史上3番目に多い飛散だった。

 一方、夏に気温が高く日射量が多いとスギの生育が良くなり、その翌年は大飛散する傾向にある。昨夏は気温が高い日が続き日照時間も長かったため、2年連続の大飛散と予想されている。

 伊賀地域はスギも多いがヒノキも多いとされ、山に囲まれて風向きの影響を受けにくい。名張市では昨年、スギ花粉が2月19日に飛散開始し、3月12日にピークに達した。ヒノキ花粉は3月17日に飛散開始し、ピークは3月29日だった。

主な治療法

 花粉症の治療は、症状の軽減や予防を目的としたものなどがあり、治療薬には主に抗ヒスタミン薬を投与する内服薬や点眼薬、点鼻薬、貼り薬がある。体内でアレルギー症状を引き起こす化学伝達物質「ヒスタミン」の作用を抑え、くしゃみやかゆみ、鼻水などの症状を抑える。

舌下免疫療法

 重度のスギ花粉症の場合、より効果の高い「舌下免疫療法」を開始する手がある。アレルギーの原因となるスギ花粉のエキスが入った錠剤を少しずつ長期間投与し、体を慣らしていく治療法で、対症療法とは異なり、アレルギー体質の根本的な改善が期待できる。治療期間は3年から5年を要する。同様に、注射による「皮下免疫療法」もある。

花粉症の予防

 予防には、身の回りの生活環境を整えることも重要となる。外出する際は、マスクを隙間なく着用したり、専用のゴーグルを付けたりして、目や鼻、口の花粉への暴露を避ける。衣類はセーターやフリースなどを避け、花粉が付きにくいつるつるした素材のジャケットなどを選ぶ。天気予報とともに発表される花粉の飛散情報もチェックし、花粉の多い日には特に注意する。

 自宅では窓を閉め、空気清浄機を活用。帰宅時には、玄関で衣類に付着した花粉を払い落としてから入室する。洗濯物は、室内で干すようにする。

 福喜多院長は「とにかくアレルギーの原因となる抗原(花粉)を回避することが大事」と強調する。また、悪化を防ぐにはバランスの良い食事や十分の睡眠、適度な運動など規則正しい生活を意識し、体調を整えることも大切となる。

 症状を抑えるために、飛散開始時期の少し前から内服薬を飲み始める「初期療法」が効果的とされている。早めの対策と、医療機関受診を心掛けたい。

- Advertisement -