【藤野さんに力を借りながらサワラをさばく中川君(手前)と見守る(右から)莉那さん、真那さん=名張市新町で】

小学4年の中川君

 三重県名張市新町で鮮魚などを取り扱う「矢の惣商店」に毎週土曜の夕方、両親や2人の姉とともに訪れる魚好き少年がいる。伊賀市桐ケ丘の市立青山小4年、中川陽翔君(9)だ。

南伊勢町田曽浦で釣ったタイを手に笑顔の中川君(提供写真)

 昨春、眼科医から「目のために、屋外で遠くを見るようにしなさい」と言われたのがきっかけで、知り合いの人に海釣りに連れてもらった。その後、伊勢方面に何度も釣りに行き、釣った魚のさばき方も教えてもらい、料理することに目覚めたという。

 「スーパーで売っている内臓を取り除いた魚ではなく、内臓が入ったままの魚1匹をさばきたい」という中川君。昨年の夏、姉の莉那さん(15)、真那さん(14)とともに、家族で初めて同店を訪れた時、創業110年を超える3代目の店主、藤野安茂さんが手早く魚をさばく姿を見てますます興味を持った。分からないことは熱心に質問し、その日買った魚は家で自ら調理するようになった。

 ユーチューブで研究しながら魚料理のレパートリーもどんどん増えており、刺身、すし、ムニエル、煮付け、塩焼きなど、休日はほぼ1人で調理。調味料やスパイスも自在に使いこなし、味付けは家族から好評だという。キッチン台が高く、調理しにくそうにしている姿を見た叔父が踏み台を作ってくれたそう。

 その姿は2人の姉にも影響を与えている。「魚釣りに行くと何十匹も持ち帰るので、皆でさばかないといけない。私も手伝っています」と莉那さん。「魚を三枚にうまくおろせた時はうれしい。将来、弟が店を出したら家族で食べに行きます」と真那さん。

 中川君は「今までさばいたことのない魚もやってみたい。今欲しいものは包丁です」とニッコリ。藤野さんは「こんなに魚好きで研究熱心な子どもは珍しい」と驚く。

 「矢の惣さんが毎回、温かく迎えて親切に教えてくれる。使わなくなった釣りざおや包丁を譲ってくれたり、外で魚をさばいている姿を見て、上手だねと褒めてくれる近所の方など、周囲の方のおかげで本人はうれしくなり、楽しく続けられるよう」と両親は感謝の気持ちを語った。

2022年1月15日付811号1面から

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