【シエルを抱き寄せる西亀さん=名張市南町で】

 目の難病で視力を失いながらもカウンセラーとして活動を続ける、三重県名張市すずらん台の西亀真さん(69)が、盲導犬との日々をつづった著書を出版した。3月下旬には、市内で初めての出版記念講演会を開催する。

 広島県三原市出身で、高校卒業後に大阪の大手百貨店に入社し、約20年間、システムエンジニアとして勤務した。異変に気づいたのは39歳の時。コンピューター画面のカーソルが見えづらくなり、検査の結果、進行性の難病「網膜色素変性症」と診断された。視野は徐々に狭まり、47歳で白杖を持つ生活となった。

 「目が見えなくなったら、何ができるのか」。将来への不安を抱える中、妻が新聞広告で見つけたカウンセリング講座が転機となった。6年間学び、資格を取得。勤務先の理解もあり、従業員のメンタルヘルスを担う産業カウンセラーへと転身し、定年までその職に従事した。

 定年前には約1年半をかけ、白杖1本で47都道府県とニューヨークを1人で旅した。目的は観光ではなく、「0を1にする」ことだったという。視力を失ってから初めて1人で新幹線や飛行機に乗り、見知らぬ土地で宿を探した。不安の中で一歩を踏み出し、無事に帰宅できた時、「これでどこへでも行ける」と確信した。

西亀さんの著書の表紙

 盲導犬と暮らし始めたのは2020年。関西盲導犬協会で4週間の合宿訓練を受け、当時2才だった「シエル」とペアになった。白杖だけでも移動は可能だったが、百貨店時代に教わった「思い出作り」という言葉がよみがえった。「新しい人生のドラマが生まれる」と考え、ともに歩む道を選んだ。

 盲導犬は10才で同協会に返す決まりがあり、シエルは来年6月に10才を迎える。「別れてから書くのではなく、今この時間を大切にしたい」との思いから、昨年11月に著書「盲導犬シエルと歩いた幸せの道」(ごま書房新社、税別1300円)を出版した。シエルとの日常とともに、「盲導犬への理解を広げたい」という願いを込めた。

 西亀さんは自らの生業を「幸せの入り口屋」と呼ぶ。講演では参加者全員がアイマスクを着用する形式を採用。あえて視覚を遮ることで、自身の内面と向き合い、言葉に集中できる時間を作るという。

 「目が見えなくなった時は『人生が終わった』と思った。しかし、多くの人、そしてシエルに支えられる中で新しい幸せに気づき、今は見えていたころよりも幸せだと感じている。私の話が、見えない所に隠れている幸せに気づくきっかけになればうれしい」と話す。

29日に出版記念講演会

 出版記念講演会は3月29日午後2時から、名張市桔梗が丘3のギャラリー閑で開催。シエルも登場する。参加費1500円、定員は当日先着20人。

 講演会の問い合わせは同ギャラリー(0595・65・1361)へ。

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