【平和を祈ってハトを放つ参加者=名張市青蓮寺で】

 終戦から80年を迎えた8月15日、太平洋戦争中に米軍爆撃機B29が墜落した三重県名張市青蓮寺で、「平和の集い」があった。在名古屋米国領事館の首席領事や地元住民ら約100人が集まった。搭乗していた米兵11人と地元の戦没者を追悼し、平和の象徴とされるハトを空へ放った。

献花後にあいさつするアンナ・ワン首席領事=同

 1945年6月5日、神戸空襲の帰途、日本軍戦闘機の攻撃を受けたB29が青蓮寺の山中に墜落した。搭乗員11人のうち2人が死亡。残る9人はパラシュートで脱出したが、終戦直前に日本軍に処刑されたとされる。

 2006年、青蓮寺にある地蔵院の耕野一仁住職(76)が「戦争の犠牲者は敵も味方も同じ」との思いを胸に、地区の協力を得て墜落現場近くに追悼碑を建立した。以来毎年、同院と名張ユネスコ協会、市宗教者連帯会が集いを共催してきた。

 この日、追悼碑前ではバイオリンとリコーダーで日米の国歌を演奏した後、耕野住職が追悼の言葉を述べた。ロシアによるウクライナ侵攻や中東の戦火に触れ、「戦争を憎み、平和の大切さを後世に伝える事を約束する」と誓った。B29墜落の目撃者らの話を長年記録してきた上田利典さん(71)=竜口=は、当時の様子を参加者の前で詳しく語った。

 昨年7月に着任したアンナ・ワン首席領事は集いに初めて参加し、地元住民らとともに碑に献花した。「毎年、敵味方を問わず、戦争で亡くなった方を追悼してくださることに心から敬意を表する。この取り組みは、和解の力を思い起こさせる。平和の大切さを再認識し、未来への希望を共有する場になることを願う」と述べた。

 同院境内では放鳩などの後、参加者が世界平和を祈りながら鐘を80回突いた。

碑の前で手を合わせる赤目中生の3人=同

中学生が作文朗読 平和への思い込め

 市立赤目中学2年の酒井妃依さん、中村七菜さん、藤田花笑さんの3人は、集いの中で、平和への思いを綴った作文を朗読した。

 酒井さんは、YOUでの職場体験でB29墜落を目撃した栢本茂男さん(89)=青蓮寺=を取材。その後、家族で広島の原爆ドームや平和記念資料館を訪れた経験を交え、「戦争は人を傷つけ、殺すだけでなく、敵味方を問わず人を狂わせる恐ろしいものだと感じた。人間らしく生きるため、世界から戦争がなくなることを強く望む」と語った。

 集いの後、耕野住職は「戦争を知る世代が減る中、次の世代へ伝えることが重要だ。中学生が学び、自分の思いを言葉にしてくれたことは本当にありがたい」と話した。

碑の前で追悼の言葉を述べる耕野住職ら=同

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