【車いすで渓谷内の橋を渡る山根さんら=名張市赤目町長坂で】

 三重県名張市の観光名所・赤目四十八滝渓谷などで2月7、8の両日、バリアフリーへの対応状況の調査があった。車いすで渓谷内を移動したり、周辺施設の入り口やトイレなどを確認したりし、参加した障害者や専門家らが運営側と課題や強みを共有した。

赤目自然歴史博物館の入り口幅を調べる参加者=同

 同市は昨年5月、水族館プロデューサーでNPO法人伊勢志摩バリアフリーツアーセンター(鳥羽市)理事長の中村元さんを地域力創造アドバイザーに委嘱。中村さんからバリアフリー観光についても助言を受けており、今回の調査が実現した。

 調査には、名張市身体障害者互助会の関係者や同ツアーセンター職員、市職員らが参加。渓谷内や日本サンショウウオセンター、赤目自然歴史博物館、名張藤堂家邸跡の他、宿泊施設3か所を2日間で調べて回った。

 8日に訪れた渓谷では、互助会事務局長で足の不自由な山根秀生さん(65)が、実際に車いすに乗って遊歩道を進んだ。途中で凸凹道や柵のない石橋などがあり、介助者が車いすを押して霊蛇滝広場までたどり着いたが、霊蛇滝や不動滝がはっきりと見える場所までは進めなかった。

霊蛇滝広場と霊蛇滝=同

 赤目自然歴史博物館では、入り口に平坦な床面が5度の傾斜に変化する部分があり、ツアーセンター職員が「高齢者がつまずく可能性がある。傾斜部分の色を分けては」などと提案。一方、館内にある凝灰岩や花こう岩など手で触れることができる展示については「視覚障害者の方も楽しめる部分」と評価した。

 博物館前にある障害者用の駐車スペースについては、表示が分かりにくい上、確保されたスペースが基準より狭いことがわかった。普段は杖を使って移動し、車も運転しているという山根さんは「私の場合はドアを全開にしてつかまらないと車から降りることができない。駐車スペースの幅を改善してほしい」と話した。

 調査の進行役を務めた同ツアーセンターの中村千枝さん(60)は「観光に携わる方は、色んな方に楽しんで頂きたいという気持ちを皆さんお持ちだと思う。できる範囲、予算、方法で解決して頂きたい」、渓谷を管理するNPO法人赤目四十八滝渓谷保勝会事務局統括GMの玖村健史さん(48)は「具体的な話を色々聞けた。まずはお金がかからず自分たちでできることから、始めていきたい」とそれぞれ話した。

 赤目滝のバリアフリー化を巡っては、昨年11月に北川裕之市長が一見勝之知事との懇談の中で県に要望した。

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