【練習で獅子頭に向かってポーズを決める天狗役の児童=名張市蔵持町原出で】

世代超え伝統継承

 三重県名張市の蔵持春日神社(蔵持町原出)の秋祭りで奉納される獅子神楽は、児童が扮する「子ども天狗」が、大人演じる獅子と息を合わせて舞う。新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年と21年の秋祭りは神事のみの開催だったが、今年は3年ぶりに獅子神楽を奉納する。蔵持獅子神楽保存会のメンバーが、本番に向けて練習に励んでいる。

 同保存会によると、各地区の秋祭りで奉納される獅子神楽は、伊賀市の敢國神社の獅子神楽(県無形民俗文化財)を基に、江戸時代後期から広まったとされる。蔵持地区に伝わる獅子神楽は、3頭の獅子が同時に舞うのが特徴だという。

今年の秋祭りで天狗役を務める高嶋君(左)と中屋君=同

 1990年には担い手不足で奉納が一旦中止になったが、その翌年に住民有志が保存会を結成して復活させた。担い手育成のため、95年からはそれまで大人が担っていた天狗役を小学生の役割に変更。現在は7歳から67歳の計33人が保存会に所属している。

 コロナ禍による2年連続の中止を経て、「3年やらないと、子ども天狗がつながらなくなる」といった心配の声も上がったといい、今年の奉納を決めた。感染拡大防止で獅子を1頭に減らし、時間も大きく短縮して行う。天狗役は、3年前にも経験している市立蔵持小6年の中屋虎太郎君(11)と高嶋大翔君(11)の2人が、交互に務める。

 秋祭りに向けた練習は、9月中旬に開始。本番間近となった10月6日夜は、天狗の面を着けた2人が、大人や先輩、来年以降の天狗役を目指す後輩たちが見守る中、太鼓の軽快なリズムに合わせて獅子をからかう動作をしたり、獅子役の大人と一緒にポーズを決めたりする場面などを確認していた。

 中屋君は「中止になっていた間に動きを忘れていたが、太鼓の音を聞くと思い出せた。かっこいい動きを見てほしい」と話す。4年前まで天狗役を務めた高校1年生の兄や、獅子役の父親からも指導を受ける高嶋君は「練習はちょっとハードだけど、ポーズを決める時が楽しい。将来は獅子役もやってみたい」と笑顔を見せる。

 同保存会の大西哲会長(59)は「子ども天狗をした子が進学や就職で地区を離れても、また戻ってくれたり、祭りの時に顔を出してくれたりする。根付いてきていると思う」と話していた。

 獅子神楽の奉納は、同神社の8日の宵宮で午後7時30分ごろから、9日の本宮で午後3時30分ごろから行われる。

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