新療法の開発に期待

日本人の2人に1人がなると言われるほど身近な病気になった「がん」。近年、新たな予防法や治療法などの研究が進められている。今回は、二次予防である検診や、今年のノーベル医学生理学賞で脚光を浴びた「免疫療法」について、医師で元厚生労働大臣の坂口力さん(84)(三重大学名誉博士)=写真=に話を聞いた。

 -坂口さんは、厚生労働大臣として初めてマンモグラフィ検診を市町の検診に導入されました。大きな転換だったと思います。どのような経緯でしたか

 坂口さん 特に女性議員の方々からの要請がありました。当時は非常に検診率が低く、何とかしなければと思っていたこともあっ て、これは良いのではないかと。
 ただ、がん検診は市町村が行っているため、予算の関係でマンモグラフィという高額な機械はなかなか導入できないところがありました。国の予算が付き、全体に行き渡るようになるまでには数年かかりましたね。マンモグラフィへの理解にも時間がかかっています。

 -今では多くの人がマンモグラフィ検診について知るようになりましたが、いまだに検診率は低いままです

坂口さん それは乳がんに限らず、がん検診全般に言えることです。自分はがんにならないと思ったり、がんが見つかるのが怖いといったりすることもあるようですが、やはり検診でがんを見つけたほうが良いのです。

 -治療法に関しては、今年のノーベル賞受賞で免疫療法が広く知られるようになりました。「免疫」についてお聞かせください

 坂口さん 人が感染症から守られ生きていけるのは、免疫力があるからです。体に細菌やウイルスが入ってきた時、免疫力が無ければ負けてしまう。がん細胞についても、私たちの体は免疫力があればそれを殺すし、がんは大きくなりません。また、手術をするにしても、どんな薬を使うにしても、がんをやっつける力が回復してこないといけません。ですから私は、免疫力を高めることが基本だと思っています。免疫力は年齢とともに落ちますし、ストレスでも落ちるものです。

 -免疫療法については、がん治療への新しい道が開けたと言われていますが、一方で免疫療法への注意を促す情報も多いです

坂口さん がん治療には、手術、抗がん剤、放射線療法という手段がありますが、この3つとも、免疫力を下げます。そうすると、手術でがんを取り除いてもまたなりやすくなる。免疫療法で補えば、抗がん剤が使える期間も長くなります。補完医療としても有効です。
 免疫療法について、ノーベル賞を受賞した本庶佑教授の方法以外は「科学的根拠がない」として非難する人がいますが、その「科学的根拠」とは、薬が効くか効かないかを判断するもの。薬は人の体には無いものですが、免疫は元々人の体の機能として持ち合わせているものなので、同じように考えるのは間違いの元です。
 米国では西洋医療にプラスした代替医療や伝統医療、例えばマッサージ、鍼しんきゅう灸、ヨガ、瞑めいそ う 想 療法などの研究を重ねています。結果、米国はがんの死亡率を下げてきている。でも日本は上がりっぱなしです。
 免疫療法については、免疫細胞を活性化させる方法は、必ずしも同じようにうまくいくわけではないことが指摘されています。この点については、今後の更なる研究が必要です。免疫を高める必要性は誰でも納得できることですから、さまざまな情報についてしっかり勉強することが大事です。

経験踏まえ全国で講演

 -そのお考えは、ご自身ががんを経験されたことによるのでしょうか

坂口さん 厚労相を辞めてから大腸がんになりました。ストレスが免疫力を下げたのかもしれませんね。手術をし免疫療法をしました。余命3年と言われましたが、もう10年になります。自分自身、患者となった経験を踏まえて「免疫の力でがんを治す会」を立ち上げ、全国で話をしています。

 -免疫についての考え方は、がん予防にもつながりますか

坂口さん その通りです。日々の生活を支えてくれている免疫は年齢とともに落ちますから、高齢になるほど配慮しなければなりません。ストレスをどう解消するのか、免疫を高めるにはどうすれば良いのかなど、考えることは大切です。

 -免疫療法の今後に関してはどうでしょう

坂口さん 更に進んでいくでしょう。現在、「光免疫療法」が研究されています。NIH (米国国立衛生研究所)の小林久隆主任研究員が開発したもので、近赤外線をがん細胞に当てて消滅させるというものです。治験も進んでいるので、期待したいですね。

伊賀タウン情報YOU 2018年12月後半(738)号」より