情報・時間を闘病者と共有

2度の手術越えNPO法人運営 岸田徹さん

 がんを経験した人たちとの対談をインターネットで生配信している、NPO法人「がんノート」(東京都中央区)。25歳でがんの告知を受け、2度の手術を乗り越えた同法人代表理事の岸田徹さん(32)=写真=が、経験者の持つ情報を闘病中の人たちと共有できるようにと2014年に始めた。配信内容や今後について岸田さんに聞いた

―がんノートのコンセプトは「『あなた』か『わたし』のがんの話をしよう」ということですが、配信のきっかけは何でしょうか

岸田さん 私は社会人2年目の時、胎児性がんになりました。1回目の手術の後、本当につらくてもう死んでしまうと思い、25年間生きてきてやり残したことに思いを巡らせたんです。その一つが社会貢献でした。自分が今できることは、同じように苦しんでいる患者さんへメッセージを発信することかもしれない、と闘病のブログを始めました。
 2回目の手術で射精障害という後遺症が残った時、男性としてのアイデンティティーを失ったように感じ、がん宣告よりもショックを受けました。必死に情報を探しても見つからず、ようやく見つけたのが、障害について書かれた個人のブログでした。その方に自分のブログを通じて連絡し、治る可能性があることを知った瞬間、立ち直ることができたのです。この時、センシティブな情報を含め、生活に関わるものは余りない、それなら経験者が発信できる場を作ろうと考えて始めたのが「がんノート」です。

―それまで続けていたブログではなく、生配信という形にされました

岸田さん ブログは継続されないものも多くありますし、顔が見えません。生配信にこだわるのは、闘病中の人たちと時間を共有できるからです。生配信中に質問してもらうと答えられます。このようなコミュニケーションによって、多くの人たちと直接つながることを目指しています。

本音届けるインタビュー

―ウェブサイトではこれまでのインタビューも視聴できますね。がんを宣告された時のことや、仕事のこと、聞きにくいプライベートなことにも触れています

岸田さん 医療については病院に聞けばいいのですが、それ以外にも、例えばお金のこと、仕事のこと、性のことなど、生活に直結する知りたいことはたくさんあるのです。インタビューでは、がん患者の「本音」を届けたいと思っています。

―これまでのインタビューで心に残っているエピソードを教えてください

岸田さん 忘れられないのは、骨肉腫を患って余命半年と言われた時に、インタビューに応じてくれた22歳の女性です。彼女がモットーとしていた言葉は「幸せだから笑うのではなく、笑うから幸せ」というものでした。つらいことはたくさんあるけれど、生活をする中で笑うこともある。だから笑顔を忘れない、と語ってくれました。その翌年、彼女は亡くなったのですが、私はそれ以来、改めて「笑い」を意識するようになりました。配信でも、明るい見通しを持ってもらえるような情報を提供できるよう心掛けています。

―今後の展望についてお聞かせください

岸田さん イベントなどで学会や企業の方とお会いします。こうした方々とのコラボなどを続けていきたいです。がんノートの放送も、主に国立がん研究センター中央病院で行っていますが、地方での放送も展開していきたいと考えています。

岸田さん イベントなどで学会や企業の方とお会いします。こうした方々とのコラボなどを続けていきたいです。がんノートの放送も、主に国立がん研究センター中央病院で行っていますが、地方での放送も展開していきたいと考えています。

 がんノート(https://www.youtube.com/user/gannotejapan)はアカウントがなくても視聴でき、配信中のコメントも可能。次回、128回目の放送は2月9日(日)午後1時から同2時半まで。