県内の検診受診率向上にも尽力

「乳房健康研究会」岡山慶子さんに聞く

 乳がん早期発見のためのピンクリボン運動を日本にも導入しようと、2000年に医師たちとともに乳房健康研究会を発足させた株式会社朝日エル(東京都中央区)会長の岡山慶子さん=写真。松阪市出身の岡山さんは三重県の検診受診率向上にも関わり、現在は桑名市で健康寿命を延伸するための事業を推進し、三重県の健康づくりに貢献している。今回は、これまでのピンクリボン運動や今後の取り組みなどについて話を聞く。

何度も米国視察へ

―岡山さんがピンクリボン運動を開始した年は、ちょうど日本にマンモグラフィ検診が導入された年でしたが、乳がんや乳がん検診についてほとんど知られていませんでした

岡山さん 当時、女性の身体について、専門家と一般女性がともに議論をすることはほとんどなく、個人の問題という認識でした。ですからピンクリボン運動の参加もかなり遅れました。多くの国で既に実施されていて、日本は123か国目だったのです。乳がん検診の認知度も低かったため、第1回目の「ラン&ウォーク」というイベントの協賛企業はほとんど外資系でした。
 ピンクリボン運動の視察のために何度も米国に足を運び感じたのは、日本社会は米国のように、がんサバイバーたちが当たり前のように経験を発信できる環境では全くないということでした。乳がんで亡くなる人、乳がんに罹患(りかん)する人が増えてきたころです。これは何としても変えなければと思いました。
 私は女性だけで立ち上げた会社で、国や行政、専門家とともに「生活習慣病の予防」「女性医療」といったプロジェクトに取り組んできましたので、ノウハウを生かし活動を進めようと考えました。

行政や企業、地域の連携で広がる

―三重県の検診受診率が低いことから、行政へ働き掛けをされたのは03年でしたね

岡山さん 乳房健康研究会が全国の自治体を調査した結果、その時三重県は全国で46位、下から2番目でした。そこで県庁へ出向き話をしました。
 その後、当時三重大学医学部附属病院の病院長だった竹田寛医師を中心に、三重県、市町村や医療機関が垣根を超えたネットワークができたのです。啓発活動などが実を結び、三重県の乳がん検診受診率は、16年には全国15位(注1)となっています。

―08年にはNPO法人キャンサーリボンズを立ち上げられました

岡山さん 視察によって、米国ではがん患者の方々へのフォローが行き届いていることを知りましたが、日本にはそうしたきめ細やかな支援はありませんでした。そこで「治療と生活」をつなぐことを目標に始めたのがキャンサーリボンズです。全国にがん患者や家族、地域の人たちが集える場であるリボンズハウスを作りました。現在、全国23か所で開設され、三重県は三重大学医学部附属病院内にあります。また、生活のシーンごとのプロジェクトを進めたり、毎年6月には「がん支え合いの日」イベントを開催しています。

―今では日本の多くの企業がピンクリボン運動に関わるなど社会も変わってきました

岡山さん ピンクリボン運動が広がったのは、医療従事者だけではなく、行政や企業、メディア、地域などの連携があったからだと思います。国連が採択した「SDGs(持続可能な開発目標)」の17の国際目標中、日本の課題とされているものに「ジェンダー平等を実現しよう」「パートナーシップで目標を達成しよう」があります。ピンクリボン運動はまさにこの目標の達成に関係しています。女性の健康への意識を高めるために、さまざまな人が知恵を絞って連携していけば、これからもこの活動は続いていくと思います。

―桑名で進めている「桑名卓球珈琲(カフェ)プロジェクト」(注2)も、住民、企業、行政一体の取り組みですね

岡山さん 卓球で健康になって、カフェで交流を深めようと、今年3月に開始しました。誰もが立ち寄れる場なので、さまざまな世代との交流ができ、そして皆がほどよい関わり方をしています。この取り組みで身体的機能やメンタルがどう変わるのか、エビデンスも取り、来年発表する予定です。来年オリンピックイヤーを迎えます。この取り組みが全国に広がれば、アスリートのみならず皆が心も身体も健康になる一助になるのではないかと思っています。


(注1)厚生労働省の2016年国民生活基礎調査より
(注2)内閣官房東京オリンピック競技大会・パラリンピック競技大会推進本部事務「beyond2020マイベストプログラム」認証