治療終え趣味の登山楽しむ 名張・福永さん

▲槍ヶ岳から北穂高岳への縦走路で大キレットを通過中の福永さん(本人提供、2019 年9 月撮影)

 「今は2人に1人が何らかのがんになると言われている。他人事と思わず、検診は必ず受けて。たとえ診断されても1人で悩まず、誰かに相談を。必ず力になってくれる」。名張市美旗中村の福永いずみさん(67)は4年前の1月、検診で乳がんが見つかった。現在は治療を終え、趣味の登山を楽しむため体力づくりに励んでいる。
 以前はほとんど検診を受けたことがなかったが、57歳から6年間勤務した会社では「ありがたいことに毎年受診させてもらえた。エコーでは自分で見ても『かたまり』がわかった」という。

前向きに治療

2月に三重中央医療センター(津市)で受けた再検査で診断が確定し、3月に三重大学病院(同)で「センチネルリンパ節生検」を受けたが、幸いリンパ節への広がりはなかった。安心したものの、結果は進行度・病期が「ステージⅡ」、性質を表すサブタイプが「トリプルネガティブ(悪性度3)」だった。
 「何も考えられなかった」―。担当医の丁寧な説明と人柄に助けられ、「この先生なら治してくれる。任せよう」と前向きになり、治療が始まった。同月、左乳房全摘手術を受け、同時に患部に体液を排出するためドレーンを入れた。5日後にドレーンを抜いた瞬間はほっとしたそうで、熱を帯びたような痛みをコントロールしながらリハビリを続け、7日目に退院した。5月からは4週間おきの抗がん剤治療(点滴)を始めたが、徐々に血管が出にくくなり、9月には皮下にポート(小さい医療機器)を埋め込む手術を受けた。しかし「髪が抜け、吐き気を伴ってつらかった。治療室に入るだけで反応し、吐いたこともあった」。次のステップに進み、1週間おきの点滴治療の中間で間質性肺炎になり入院。治療はそこで強制終了になった。

夫とともに

 つらく苦しい治療中に助けられたのは、家族の支えだけでなく、3年前に同じく全摘手術をした友人や、周りの何らかのがん経験者たちの言葉だった。「寄り添って励まし続けてくれたことが大きな支えになった」。手術から1年半後、本格的に趣味の登山を再開することができ、喜びをかみしめた。
 今後も半年に1回の経過観察は必要だが、大好きな登山を楽しむため、毎日入念なストレッチと1時間半のウオーキングを続けている。最初は興味の無かった夫の義行さん(71)も同行するうちに山に魅了され、今では良いパートナーだ。2人の今年の目標は、絶景に出会える断崖の登山道が続く黒部渓谷(富山県)の「下ノ廊下」だそうで、福永さんは「体力の続く限り、いろんな山にチャレンジしてみたい」と笑顔を見せた。

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