がん経験者ら集う マギーズ東京

 がん経験者や家族、友人たちが予約無しで気軽に訪れてくつろいだり、看護師、心理士と相談もできる「マギーズ東京」(東京都江東区)。「第二の我が家のような場所」というコンセプトで、利用は無料。英国のがん患者支援施設「マギーズキャンサーケアリングセンター」から承認を得て、2016年日本で初めて開設された。以来、東京のみならず、全国から月間500人から600人の利用があるという。がんに影響を受けた人が安心して過ごせる場の必要性などについて、センター長の秋山正子さん=写真=に話を聞いた。

―マギーズ東京を開こうと思われたのはなぜでしょう

秋山さん 時代の要請だと思います。がんでの入院は短期になり、通院での治療に変わったため、医療者からの情報は届きにくくなりました。
 それなのにじっくり相談できる場がありません。訪問看護の仕事でも、これ以上の治療はできないといった最後の段階で任されることが多く、もっと早く話を聞いて情報提供できていたらと考えるケースが増えてきました。
 そうした折に、英国のマギーズセンターのことを知りました。乳がんが再発した造園家のマギー・ジェンクスさんは、病院で余命数か月と告げられた際、次の患者が控えているからと、そこにしばらく座ることさえ認められませんでした。
 そんな彼女が「治療中でも患者ではなく1人の人間でいられる場所と、友人のような道案内人がほしい」と願ってできたのがマギーズセンターです。日本にもこのような場が必要だと強く思い、開設しました。

▲マギーズ東京の外観

―予約をせずに利用できることの意味を教えてください

秋山さん 「第二の我が家のような場所」と感じてほしいので、いつでも好きな時に立ち寄って支援を受けられることが重要だと考えています。
 ここに来て、お茶を飲んだり読書したりするだけでも構いません。名前や住まいなどをお聞きすることもありませんし、記録も残しません。さまざまな地域から来られたということが分かるのも、お話を伺う中でのことです。
 予約無く参加でできるグループプログラムもありますが、グリーフケアやメイクプログラムなど予約が必要なものもありますのでお問い合わせください。

―「第二の我が家」と言われる通り、ドアを開けるとリビングルームのような空間があり、テーブルには花が飾られ、大きな窓からは庭が見えます。インテリアなどは木を素材としたものが多いですね

秋山さん 造園家だったマギーさんは「庭の見える環境」を望まれました。テーブルの花はマギーズの前の花畑で地域の小学生の親子たちと一緒に育てたものです。
 マギーさんの考えに「人は環境で既に50%癒やされる」というものがありますが、それに共感した人たちから、本物の木やインテリアの寄付を頂きました。ここを訪れた瞬間から「自分は大事にされている」と感じられる空間であることが大切です。
 がんに影響を受けた方は、漠然とした不安を抱えながらさまざまなことを自分で決めなければなりません。人は迷った時、もやもやした思いを抱えるものですが、どこかへ相談するにしても「何の相談なのか」など、問題が細切れにされます。ここは看護師や心理士がじっくり話を聞き、思いを整理する場でもあります。

連携密に活動を

―他地域でもマギーズのような施設をつくりたいと見学に来られる人も多いようです

秋山さん 実は、マギーズ東京を開く前の2011年、マギーズのような場所があればと、新宿に「暮らしの保健室」を作りました。がんに特化せず、病気や生活の困りごとを無料で相談できる場です。ここを参考にした取り組みは全国で広がってきました。マギーズではこちらの紹介もしています。

―秋山さんは、毎年開催される三重大学での特別講義を始め、訪問看護に関するお仕事で名張、四日市、伊勢などを訪問されています。三重県のがん支援についてどう思われますか

秋山さん 各地域でとても熱心に活動され、独自の取り組みも多いですね。そうしたグループ同士の連携を密にすれば、更に充実した活動ができるのではないでしょうか。

―今後についてお聞かせください

秋山さん この土地は22年までの借地で、建物もまだ恒久的なものではありません。この活動が継続できるよう奮闘しています。マギーズをぜひ知って頂きたいので、三重県からもどうぞお越しください。

問い合わせはマギーズ東京(電話:03・3520・9913)へ。

秋山正子さん 1950年、秋田県生まれ。ケアーズ・白十字訪問看護ステーション代表取締役所長、認定NPO法人マギーズ東京共同代表理事・センター長。2010年、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演。19年8月、フローレンス・ナイチンゲール記章受章。