転換期迎え

乳がん検診ネットの小林医師に聞く

 乳がん検診が転換期を迎えている。検診受診率の向上が見られる一方で、検診の諸問題についての議論も深まってきた。こうした乳がん検診の現状や今後の方向性について、三重乳がん検診ネットワーク(津市江戸橋)の小林茂樹医師=写真=に聞いた。

 ―本紙ピンクリボンサポートの連載初回、2005年度の乳がん検診受診率に触れ、全国平均17・6%、三重県はそれを下回る13・6%で全国38位、名張市5・8%、伊賀市9・1%と報告しました。昨年発表された14年度(注)では、全国平均26・1%、三重県は37・8%と上回り、全国11位、名張市は10%、伊賀市は27・6%と上がりました。

小林医師 この厚労省の受診率は、視触診およびマンモグラフィでの検診を対象としているため、マンモグラフィ単独の検診が含まれていません。三重県は単独の検診を実施する市町も多いため、ネットワークではそれを含めた「マンモグラフィによる検診受診率」を算出しています。それによると、全国平均31・9%、三重県は46・6%、名張市は48%、伊賀市は43・5%です。

 ―国が目標とした50%に近い数字ですね。ただ、受診率は上がりましたが、死亡率は下がりません。乳がんにかかる人の数も増えています。

小林医師 早期のがんが多く見つかるようになった反面、命を脅かす浸潤がんの数は変わらず、死亡率減少につながっていません。そのため検診の有効性について議論されるようになりました。

検診受ける不利益は

 ―検診を受ける不利益についても指摘されているようです。

小林医師 不利益には例えば「過剰診断」が挙げられます。早期がんの中には放っておいても進行がんにはならなかったり、消えたりするものもあります。そういうがんも検査や治療の対象となるため「過剰診断」という不利益を生むわけです。しかし今の医療ではまだ、進行するがんとしないがんとを区別できないのです。

 ―今後の医療の発展が望まれますね。では検診の有効性についてどう考えればいいのでしょう。

小林医師  検診による早期発見、早期治療が大切であることに変わりはありません。症状があってから受診し、進行していることもあります。検診によって浸潤がんが見つかる場合もあるので、定期的に受けてほしいです。また、最近では2次予防である検診だけでなく乳がんのリスク要因を考える1次予防の重要性も説かれるようになりました。

 ―そのリスクとはどのようなものですか。

小林医師 出産経験がない、初産年齢が高い、授乳経験がないなどの要因、喫煙、肥満など生活習慣に関する要因、近親者に乳がんになった人がいるなど家族歴についての要因があります。要因が重なるとリスクも高くなります。こうした情報は、国立がん研究センターのホームページ(http://ganjoho.jp/public/index.html)など、科学的な根拠に基づくものを発信しているところから入手してください。

(注)厚生労働省「平成26年度地域保健・健康増進事業報告」より

伊賀タウン情報YOU 2017年3月前半(695)号」より

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