【天日干しされ寒風に揺れるそうめんと宮本さん=伊賀市市部で】
澄み切った冬空の下、干し台に掛けられた白いそうめんが、冷たい風を受けて揺れる。昔ながらの寒製手延べ製法を守り続ける三重県伊賀市市部の民家で、天日干しが最盛期を迎えた。地区唯一の家業を今季から引き継いだ夫婦が、仕上がりを見極めながら黙々と作業を続ける。
天日干しは、風味やつるっとしたのど越しを左右する最終工程。長さ約2メートルに延ばした麺を朝から数時間、屋外に掛け、気温や湿度、風の強さを見極めながらゆっくりと水分を抜いていく。
主な原料は小麦粉、塩、水。前日から生地を練り、寝かせ、引き延ばす工程を何度も重ねる。適度に冷え込む市部地区は、そうめん作りに適した環境とされるが、気象条件がそろわなければ作業はできず、職人による見極めが欠かせない。
市部地区では大正時代、生産者が40軒あった(「上野市史」より)。農閑期の仕事として広く行われたが、時代の流れとともに数は減り、約20年前からはこの1軒のみが製法を守り続けている。
亡父から家業受け継ぐ 宮本さん夫妻

製造を担う宮本祐也さん(41)は昨年、3代目の父正三さんの死去を受け、正式に事業を継いだ。かつては市内の自動車販売店で整備士として働いていたが、2023年から家業に携わり、父を支えてきた。「父が高齢になったこともあったが、『いつかは継ぎたい』という思いもずっとあった」と振り返る。
そうめん作りは、経験がものを言う職人仕事だ。正三さんは20代でこの道に入り、昨年3月に80歳で亡くなる直前まで現場に立ち続けた。がんで入退院を繰り返す間も、常にそうめん作りを気にかけていたという。
宮本さんは初めて、全工程の判断を担う冬を迎えた。「見て覚えてきたつもりでも、いざ自分が決める立場になると難しさを痛感する。長年続けてきた父は立派だと思う」と語る。
妻の由佳さん(42)も、今季から作業に加わっている。これまで会社の事務員として働いてきたが、宮本さんの母の恵美子さん(76)とともに家業を支えるため、現場に立つ決断をした。「作業スピードが速くて大変だが、夫と義母に教わりながら一生懸命についていきたい」と話し、干した麺を箸で分ける作業を真剣な表情でこなす。

夫妻は2月末まで作業を続ける予定で、宮本さんは「皆さんから『おいしい』と言っていただける、唯一無二のそうめんを、これからも作り続けたい」と語った。
宮本さんが作ったそうめんは、「伊賀の糸」の商品名でJAいがふるさとの直売所「とれたて市ひぞっこ」(伊賀市平野西町)などに出荷される。今季は約2・5トンの生産を目指す。
〈YouTubeで動画「寒そうめん作り」(https://youtube.com/shorts/Kw5qSbK53ig?si=UD3jUfRY-9_jkckF)〉
2026年1月24日付908号1面から
















