【展望台のベンチから赤目の里山を眺める参加者ら(提供写真)】
天正伊賀の乱の終戦の地として知られる、三重県名張市赤目町柏原の柏原城(滝野城)址と、そこから南東に続く竜神山山頂への登山コースがこのほど整備され、お披露目の散策イベントが開かれた。

赤目まちづくり委員会が10年ほど前から柏原城址の整備を開始。5年前、同委員会内に発足した「あかめ里山文化保全会」が林野庁の「里山林の整備と利用」交付金を活用して急ピッチで進めてきた。
整備前、柏原城址は雑木が生い茂り、足を踏み入れることができないような状態だったが、同会のメンバーは城址への進入路に伐採した竹林のチップを敷きつめ、空堀や石落としの土塁跡、石垣を組んだ空井戸などの史跡周辺も掃除し、城址は往時の姿を取り戻した。
また、城主の滝野吉政の居館があったといわれる東側の平坦地は、6年かけて一面を覆っていた竹やぶを原野に戻し、今年10本の桜も植えた。今後、説明看板やベンチを置き、城址を見上げる城見公園として整備していく計画だ。
眼下に広がる田園風景
更に柏原城址から南東に続く竜神山の登山道約2キロをハイキングコースとして整備。城址を出発し、横山古墳群を見ながらつづら折りの急坂を登ると、標高466メートルの竜神山の頂上にたどり着く。同会代表の宮本篤さん(67)によると、「頂上にある竜神さん(海神社)では60年ほど前まで毎年4月1日に雨ごいをする竜神祭(農耕儀礼)が行われ、参拝者でにぎわっていた記録がある」と説明する。
同会では、定期的な点検整備をしながら竜神神社から七ツ池までの約700メートルの稜線一帯は朽ちた松などを撤去している。展望が開ける「里見台」には5つのベンチを並べた。眼下には市内西部の田園風景や遠くには伊賀上野城まで見渡せるという。
6月7日、同会が主催した「あかめ里山、初夏の歴史文化探訪と自然満喫コース」と題したハイキングには、地元住民など22人が参加、散策を楽しんだ。参加した吉田富世一さん(63)は「20年ほど前、最後に竜神さんに登った時は雑木や草木で赤目の街も見えなかったが、予想以上に山が奇麗に整備されており感動した」と話す。
宮本代表は「柏原城址は今冬、城内の安全確保と当時のイメージをリアルに体感できるように竹垣を仮設置するなどボランティアを募って整備を続けたい。また安全な登山ルートができたことで、昔から竜神さんと親しまれ、旧赤目小学校の校歌でも大切なシンボルとして愛された山に多くの市民が訪れ、山頂に歓声が戻ればうれしい」と話している。