【「すいろまもるテープ」を紹介する名張工場の高山さん(右)と中森さん=名張市で】

 各種粘着テープを製造・販売している菊水テープ株式会社(本社・大阪府八尾市)が、10月に用水路の水漏れを簡易補修できる「すいろまもるテープ」を発売した。これまで野菜や果物を栽培する農家向けに、作物の表皮を日焼けや傷から守る「かぼちゃまもるテープ」「りんごまもるテープ」などユニークな商品を発売している同社が、米農家向けに発売した待望の商品だ。製造している三重県名張市八幡の同社名張工場を訪問し、企画、製造の担当者から開発の裏話を聞いた。

来場者の質問から……

 2年前の10月、同市南町の名張産業振興センターアスピアで開かれた「名張EXPO」。市内の企業がSDGsの思想のもとに日頃の感謝を込めてコストパフォーマンスの高い商品を提供するイベントで、約1000人の来場者でにぎわった。

 出展していた同社のコーナーに、名張出身で京都のU字溝メーカーに勤める男性が立ち寄った。そこに展示してあった商品の一つで、駐車場や駅のホームなどアスファルトの表面に強力に接着し風雨にも耐える同社のラインテープ(安全標示用テープ)を見て、「このテープを用水路の補修用に使えないか?」と質問したという。

 対応した同工場生産部次長の高山進吾さん(56)は、このテーマをすぐに持ち帰り、本社で商品企画を担当する企画開発室課長代理の葛城理一さん(45)に相談。ここから「すいろまもるテープ」の開発が始まった。

 高山さんは「これまで米農家に対しては、獣害から守るため、動物の好きな匂いや嫌な臭いを発する商品を考えていたが、苦戦していた。今回、男性から頂いた声は、意外であり驚きだったが、切実なニーズがあり、企画マンにとっては『渡りに船』だった」と語る。

 例えば、田植えを控えた農家が田んぼに水を入れようとした時、水路から水が漏れているのを発見したとする。目地が古くボロボロになり、U字溝の継ぎ目から水漏れしている状態だ。これまでは、市販されているモルタルやコーキングを継ぎ目部分に塗って補修していた。しかしうまくいかず、2度塗りを試みたり、ひどい時は目地の下が大きな空洞になってしまっていたりと、使う材料も多く必要で、コストや作業効率の面でも課題があったという。

 今回の商品は目地の隙間にテープを貼って簡易補修するもの。U字溝の目地の表面を掃除し、テープを溝に合わせてカット。ゴムハンマーでテープの表面をたたいて圧着し、バーナーの火であぶることでU字溝の表面の凹凸に密着すれば施工完了だ。修理箇所が5、6か所あっても作業効率が良く、コストも従来の工法より大幅に軽減されるという。特殊なシートや粘着剤、工法について現在、特許出願中だ。

地元から改善提案

 商品の実用試験段階では、同市美旗地区の新田区水利組合が全面的に協力し、貴重な改善提案をした。転落事故防止の観点から、目立つスカイブルーの色の採用は同組合の提案だったという。

 美旗地区出身で同工場技術部主任の中森翔太さん(30)は「テープを貼る前に、接着面を完璧に清掃することが一番大事。商品の長寿命化に向けて、更に取り組んでいきたい」、高山次長は「名張EXPOや東京での農業WEEKなどへの出展を通して、これからも新商品のネタを集めて商品化していきたい」と、それぞれ話している。

 同社では、農家向けに、防草シートの端を止める「壁面両面テープNo・1800」も10月に同時発売した。

 問い合わせは同社名張工場(0595・64・1212)まで。

テープを使った水路の補修作業(提供写真)
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