【上野テクノセンターの重要性を強調する瀬木さん=伊賀市ゆめが丘で】

 今年6月、医薬品大手「ロート製薬」(本社・大阪市)の新社長に、三重県伊賀市出身の瀬木英俊さん(63)が就任した。8月上旬にYOUの単独インタビューに応じた瀬木さんは「国内外、世界中の皆さまにウェルビーイング(心身の健康)を届けるのが第一。健康と言っても、頭の先からつま先までいろいろある。より良い製品を生み出し、もっと多くの方に届け続けたい」と思いを語った。

 インタビューの直前にも、1999年に操業を開始した伊賀市ゆめが丘にある主力工場「上野テクノセンター」の生産ラインを視察した瀬木さん。「弊社の商品は、国内出荷だけでも年間約3・2億個。この商品一つひとつが、お客さまの手に渡ると思うと胸が熱くなる」と静かに語った。

伊賀から世界へ挑む

 瀬木さんは千年以上の歴史がある伊賀市内の寺院の長男として生まれ、法要や寺務、運営などに携わり、地域貢献の役割も担ってきた。子どものころの思い出としては、自然の中を駆け回った日々を挙げ、「テレビゲームなんてなかった。友だちと山や川を走り回って遊ぶのが何よりも楽しかった」と振り返る。

 上野高校時代は、伊賀線に揺られて通学した。「今では考えられないかもしれないが、朝のラッシュ時はまるで山手線のようにぎゅうぎゅう詰めだった」と苦笑する。

 理系科目全般が好きで、特に化学に興味を持った。テニス部と化学部に所属し、勉強にも部活動にも全力を注いだ。テニスは社会人になっても続け、大会に出場したり、名張市内のテニスクラブでコーチを務めたりした。

 大学は京都薬科大学に進学。卒業後は「日本ヴイックス」(現P&Gジャパン)に入社し、研究開発などに約12年間携わった。

 その後、ヘルスケア領域で更に力を発揮したいと考え、34歳の時にロート製薬へ転職。目薬「アルガード」、胃腸薬「パンシロン」、機能性化粧品「オバジ」ブランドなど、数多くの商品開発に関わった。

 欧米やインドへの販路拡大、他社との提携、企業買収なども担当。2011年から経営企画部長を14年間務め、22年からはCSO(最高戦略責任者)として、グループ全体のかじ取りを担ってきた。

110か国以上で展開 売上3000億円超

 現在、ロート製薬は世界110か国以上で製品を展開し、昨年度の売上高は3086億円に達した。そんなグローバル企業の中でも、瀬木さんは上野テクノセンターを「最重要拠点」と位置付ける。「今後も進化を続け、地域の皆さんとともに最高の製品を生み出したい」と語る。

 同工場ではAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を導入し、センサーや協働ロボットなどを活用した「スマート工場化」を推進。最先端の製造環境を構築している。

 20年前から実施している「改鮮活動」では、現場従業員による日々の改善提案が、経営改善レベルにまで発展している。瀬木さんは「整理整頓から始まった取り組みが、今では企業戦略を支える力になっている。今後もこの活動を強化したい」と意欲を見せた。

「メイドイン伊賀」のポップ

 同工場は地域貢献にも力を入れており、地元イベントへの参加や小学校でのコンサート開催など、次の時代を担う若者たちを応援する取り組みを積極的に展開している。その一環として、製造部門の社員が名古屋営業所の業務も担い、伊賀地域のドラッグストアに出向いて、同工場で生産された自社製品に「メイドイン伊賀」のポップを掲げる活動も行っている。

 瀬木さんは「伊賀から生まれた製品を地域の皆さんにもっと知っていただき、一緒に広め、盛り上げていけたら」と語った。

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