【伸びきった毛と毛玉に覆われた救出時のシーズー「だいち」(提供写真)】

伊賀市の動物保護団体が救出

 三重県内の住宅で6月中旬、劣悪な環境で放置された犬8匹と猫4匹が見つかった。ひとり暮らしの男性が急死したことで、取り残された動物たちの存在が明らかになった。動物虐待や飼育放棄は、悪意で起きるケースだけではない。

排泄物で荒れ果てた室内(提供写真)

 動物たちを救出したのは、伊賀市服部町の一般社団法人「動物保護団体わんらぶ」。理事長の橋本慶志子さん(25)は6月15日、別団体の要請を受け、男性の息子やスタッフとともに現場の家に入った。

「愛されていたはず」の動物たち

 玄関から足の踏み場もないほど散らかり、動物たちが居た部屋には床一面に排泄物が積もっていた。強烈な悪臭が漂う中、飛び交う羽虫。サウナのような熱気の中、長毛種の犬たちは何年もトリミングされず、伸びきった毛はふんがこびりつき、無数の毛玉になっていた。毛が絡まり続けたせいか、足が折れてしまった犬もいた。

ケージの中で助けを待っていた犬(提供写真)

 この家に暮らしていたのは64歳の男性。心筋梗塞で緊急搬送され、帰らぬ人となった。

 男性の死後、離れて暮らしていた息子が家を訪れ、初めて飼育放棄された動物たちの状況を目にした。親子間の連絡は普段から希薄で、動物を飼っていることは知っていたが、ここまでの数とは知らなかったという。

 橋本さんは「動物たちは攻撃的ではなく、人との関わりを求めて寄ってきた。飼い主が元気だったころは、深く愛されていたはずだ」と語る。男性は持病の悪化で心身ともに衰える中、動物たちのことも含めて誰にも助けを求められず、全てを一人で抱え込んでしまっていたと推測される。

「どうすれば防げたのか」 

 橋本さんがSNSでこの出来事を報告すると、コメント欄には男性への怒りの声が相次いだ。しかし橋本さんはこう言い切る。「怒りが人を追い詰め、助けを求めることすら許さなくしている。大切なのは『なぜこうなったのか』『どうすれば防げたのか』を考えること。世話がつらくなった時点で誰かに頼れていたら、ここまでひどくはならないはずだ」

 猫4匹は別の団体が保護し、わんらぶでは8匹の犬を受け入れた。シーズーやマルチーズ、ヨークシャテリアなど、トリミングを終えてようやく犬種が判明した犬もいた。現在は犬たちに適切な医療を受けさせ、健康状態を整えている。一部の犬は、里親探しを進めている。

救出後、トリミングして奇麗に生まれ変わったシーズー「だいち」を抱く橋本さん=伊賀市で
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