三重県伊賀市下友田出身で、昨年6月に98歳で亡くなった松本斉一さんの絵画を展示する「松本斉一遺作展」が、9月13から20日まで、同市大谷の前田教育会館で開かれる。かねてから「故郷で作品展を開きたい」と相談していた弟の惣平さん(88)=同上野田端町=が遺志を継いで企画したものだ。
松本さんは地元の尋常小学校を卒業後、大阪に出て就職した。第二次世界大戦では中国・天津に出兵し、復員後は旧国鉄や大阪市内の鉄工所で働いた。
若いころから絵を描くのは好きだったが、特に関心を持つきっかけになったのが、出兵した中国で当時の上官から、洞窟壁画やシルクロードの話を聞いて感銘を受けたことだった。本格的に絵を描き始めたのは50歳を過ぎてからで、当時暮らしていた大阪府寝屋川市の絵画サークル「えふで」で腕を磨き、大阪市の公募展などで入選を重ねてきた。
松本さんが90歳を過ぎたころ、惣平さんから「そろそろ故郷の伊賀の人たちにも、その個性的な作品を見てもらったら」と誘い、会場の候補などを2人で相談していたが、新型コロナ感染拡大の影響で実現には至らず、志半ばで松本さんは他界。念願の故郷での初の作品展は、くしくも遺作展として実現することになった。
出展される作品は、想像で描かれた中央アジアの人物や風景、生涯のテーマとして描いていた「働く人の姿」など、20号から50号まで約80点。惣平さんは「描かれている人物の表情や景色の色使いなど、とても個性的で見応えがある。兄の故郷への思いも込めて企画展を開いたので、ぜひ見に来て」と語った。
作品展は入場無料、時間は午前10時から午後4時(最終日は正午)まで。月曜休館。
問い合わせは惣平さん(090・8367・8338)まで。
2023年9月9日付851号15面から
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