三重県名張市が設置する市老人福祉センター「ふれあい」(丸之内)が、本来必要な公衆浴場法に基づく県知事の営業許可を受けずに浴室を運営していたとして、県伊賀保健所が市に行政指導したことが5月2日、わかった。市は当面の間、浴室の利用を停止すると発表した。
市によると、同センターは1996年に旧市庁舎跡地に完成した市総合福祉センター「ふれあい」の3階で、同時に開設。高齢者のレクリエーションや交流の場として1日200円で利用でき、茶室などの他、男性と女性用の2つの浴室も備える。2006年度から市社会福祉協議会が指定管理者となっており、浴室は21年度、年間延べ約8200人が利用していた。
同保健所は4月27日、浴室が法令違反の状態で運営されていることを把握し、直ちに利用を停止するよう市に求めた。発覚のきっかけは、1月に老朽化で設備が故障した女性用浴室の再開に向け、市が保健所に確認を求めたことだった。
公衆浴場法では、銭湯などの他、一般的な老人福祉センターの浴場も公衆浴場に該当するが、「ふれあい」は開設当初から営業許可を受けていなかった。無許可営業は罰則があるが、保健所は「悪質ではない」として刑事告発しない方針。
市の担当者は「保健所の指摘を受けるまで、許可の必要性は認識していなかった」と説明。「開設段階には県も含め、一定の協議をしていた記録がある。どの時点から許可が必要だったのかは不明」としている。
無許可であったため県の監督下にもなかったが、浴室の衛生管理について市は「国が示すマニュアルに従って、適正に管理してきた」としている。
市は、女性用浴室の設備の他、男性用浴室にも改善すべき点があるとしており、今後については「修繕には多額の費用がかかり、規模の見通しも立っていない。施設の在り方も含めて検討していく」、利用再開については「少なくとも今年度中は不可能」としている。