「異変に気付く仕組みづくりを」
三重県名張市の住宅街で8月中旬にあった、独り暮らしの高齢者のトイレへの閉じ込めトラブル(8月22日付「『助けて』自宅トイレで15時間恐怖 独り暮らし高齢女性閉じ込め 名張」(https://www.iga-younet.co.jp/2022/08/22/62432/))について、トイレの環境改善に取り組むNPO法人「日本トイレ研究所」(東京都)の加藤篤代表理事に話を聞いた。
閉じ込めを防ぐ対策は
「特に独り暮らしの高齢者の場合、できることとして、携帯電話の持参、鍵を閉めない、などが考えられる。トイレの外にある家具や掃除道具などが倒れてきて、扉が開かなくなることもある。日頃からトイレの周りに物を置かないことも大切」
事案をどう受け止めたか
「『トイレと高齢者』という視点から、『社会がどう高齢者を見守っていかなければならないか』を問題提起していると思っている。高齢者にとって、トイレは突然倒れることが心配される場所。それは排泄(はいせつ)で力む場であり、冬場などは他の部屋との温度差があるためだ。閉じ込めも対策が必要だが、それ以上に高齢者はトイレの中で突然具合が悪くなって動けなくなる確率が高い。地域の見守りやテクノロジーを活用し、『高齢者の身に何かあった時に社会が気づける仕組みづくり』をすることが求められる」
その仕組みとは
「ハイテク、ローテク、そしてコミュニティーの活用。ハイテクは、緊急時に関係者に通知が届いたり、転倒を検知したりする機能が搭載されたスマートウォッチのようなものだ。ローテクは、例えば公共トイレの緊急呼び出しボタンを独り暮らしの家庭のトイレに付けて、押したら外部の人にSOSが発信されるというようなもの。しかし、SOSが発信されても周囲が動けなければ意味がないので、やっぱりコミュニティーも大切。日頃からの声掛けも含め、地域で高齢者を見守っていく体制が重要。今回の閉じ込めでは配達の方が助けたということだが、次の時代、そういったケースは今より少なくなるかもしれない。いろんな方法を考えていく時代になっていると思う」
2022年9月10日付827号26面から