【家業の伊賀焼窯元を継承した大矢さん=伊賀市丸柱で】

 創業150年の伊賀焼窯元「カネダイ陶器」の5代目として昨夏に家業を継承した、三重県伊賀市丸柱の大矢明日香さん(37)。先代の父・正人さん(享年67)の急逝から約1年、今年4月から信楽窯業試験場(甲賀市)に通い始め、ろくろの修行が始まった。「同じ作業を積み重ねていくと、できなかったことができるようになるのがうれしい」と率直な気持ちを語る。

ろくろを回す大矢さん=同

 昨年6月、急性骨髄性白血病と診断された正人さんは、滋賀県内の病院に入院した翌日に亡くなった。あまりに急な別れだったが、残っていた製作途中の注文品などを近くの窯元らの協力も得て、なんとか納品するなど、家族に悲しんでいる余裕はなかった。

 「仕事に追われながら、家族を守ってくれていた父だった」と回想する大矢さん。7年前から母・宏子さんとともに家業を手伝い、正人さんの生前は、土鍋や行平鍋、小物などの製造を家族3人で手分けしていた。

新製品生み恩返しを

 父の跡を継ぐ決心をし、同試験場で本格的に焼物のことを学び始めた。平日は午前9時から午後4時半までプログラムをこなし、現在は同じ分量の土をろくろに取り、定めた数量をいかに早く仕上げるかの訓練に打ち込んでいる。研修内容をこなすうちに、納期までに注文数を必ず間に合わせていた父の真面目な姿勢に改めて気づいたという。

 先代の背中を追うのは継いだ者の使命でもあるが、絵付けが得意な大矢さんには、新たな製品を生み出すことで正人さんに恩を返したい思いもある。「将来はろくろ成形品だけでなく上絵付の皿なども作れたら。父とは違うスタイルの職人として一人前になり、伊賀焼の伝統的な器を届けたい」と思いを語った。

 大矢さんや正人さんの作品は展示室で見ることができる。

 問い合わせはカネダイ陶器(0595・44・1517)まで。

2022年6月25日付822号1面から

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