【(左)マダイの生ハム風、(右)マダイ手にする福永さん(提供写真、3枚とも)】

鮮度・食感・うまみ生かし

 新型コロナの感染拡大による外食産業への影響を受け、行き場を失いかねない魚を気軽に取り寄せができる商品に生まれ変わらせようと、活魚の販売・配送などを手掛ける西国水産(本社・和歌山県串本町)が、「冷燻」という手法を用い、加工したマダイの生ハム風を開発し、インターネット通販などで販売している。この商品を開発した三重県名張市八幡出身の福永賢一さん(38)に商品化への思いなどを聞いた。

 大学で情報システムを学び、IT関連の会社に勤務していた福永さんは、結婚後に妻の家族が経営する同社に入り、現在は神戸営業所(神戸市東灘区)で養殖魚の手配・配送業務を担当。コロナ禍で出荷が滞る魚たちを前に、鮮度や品質にこだわる同社の一員として「新鮮な魚を新鮮な状態で食べてもらう」にはどうすればいいか、頭を悩ませていた。

 生ハムの製法をヒントに、業務の合間を縫って、最初は段ボールで作った燻製機で試作を開始。1回の試作には数時間を要するため、「何度も心が折れそうに」なりながらも、思い描いた味わいに近づけていく。桜のチップを使い、熱を加えず煙を当てることで刺身のような食感を残した。逆に脂ののった腹身はうまみを凝縮させるため熱を加えて燻製にしたスモーク。約1年かけて納得できる製品が出来上がった。

コロナ禍で発想 取り寄せ品に

 SNSを通じた口コミの他、関西圏の情報バラエティー番組でも紹介され、少しずつ知名度は高まってきた。生ハム風はつまみやサラダなどに向き、燻製はカットしそのままチーズと合わせるのがおすすめ。生ハム風(200グラム前後)とスモーク(40から80グラム)のセットは税込み3240円で販売している。

塩釜焼き

 何よりも中心業務の活魚販売・配送の拡大につなげることができるよう、取引先や飲食・観光業者への加工品の提案、ネット通販を活用した取り寄せ品としてのPRも充実させていきたいそうで、福永さんは「名張を出て20年、地元にはいろんな思いがあり、大切な仲間がたくさんいる。自分が携わってきたことを少しでも知ってもらい、味わって頂けたら」と期待を込めて話した。

贈る「塩釜焼き」

 福永さんがSNSでの話題作りにと始めたのが「塩釜焼き」。マダイを塩で固め、表面に身近な人物や著名人の顔を描いて焼き上げたもので、家族や友人へ贈り喜ばれている。「現時点では趣味だが、将来は商品化できたら」と話した。

2022年3月26日付816号20面から

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