【収穫の終わったほ場に立つ福永さん(右)と小野さん】

 農業者の高齢化や後継者不足が深刻化する中、三重県伊賀市の大山田地区の約1割に当たる82万平方メートルもの農地を離農者から借り受け、一括管理している、同市平田の有限会社大山田ファーム。管理農地はこの2年間で約20万平方メートルも増加し、農作業の代行業務の必要性は年々増している。

 同社は2002年に社団法人大山田農林業公社から独立し、稲作を中心に、4人の社員が実働作業を担当している。管理農地のうち60万平方メートルを水稲が占め、菜種と小麦が各5万平方メートル、更に菜種と小麦の裏作として大豆を10万平方メートル栽培している。

 水稲は4月から6月に苗を植え付け、9月から10月に収穫。地元住民を始め、JAいがふるさと、レストランなどに販売している。稲刈り作業と並行して、9月から11月には菜種と小麦の種をまき、それぞれ翌年の6月に収穫する。

 菜種は同公社が「伊賀市菜の花プロジェクト」の一環として栽培を推奨しており、推進役として同ファームが耕作面積を広げている。収穫した菜種は同公社の搾油施設に出荷し、伊賀産菜種油「七の花」ブランドで製品化されている。

 また、裏作の大豆は7月に種をまいて12月に収穫し、JAなどに出荷している。こうした一連の作業を4人が年間サイクルで回しているが、農繁期には10人ほどのアルバイト・パートも雇用している。

 管理する農地が年々増える中、課題も多い。代表取締役の福永兵衛さん(56)は「国が進めたほ場整備事業から約50年が経過し、水路の疲弊で水漏れする場所もある。また、数年間未耕作だったため、荒れた状態でも一から作付けしている。一方で、耕作条件の良い所では、いかに単位収穫量を上げていくかが今後の課題」と話す。

 同社では、農作業の効率化・近代化を促進する「スマート農業」を積極的に導入している。小型ヘリコプターによる農薬の広域散布や、ドローンを使った肥料・農薬の散布にも取り組んでいる。ドローンでの広域散布は今まで外部に委託してきたが、来年度からは業務用ドローンを使い、自社で本格実施する方針だ。また、GPS機能を搭載し自動運転のできる田植え機を使い、作業の効率化を図っている。

2台のコンバインを使った収穫作業(提供写真)

大切な農地預かる

 昼夜の寒暖差が激しく、清流と古琵琶湖層の肥沃な土壌で栽培した大山田産の米は甘みも強く、県外からの指名買いも多いという。6年前、大阪から同市真泥に移住してきた取締役の小野元治さん(44)は、同公社が毎年市内外の家族を対象に1年間の農業体験授業を行う「おおやまだ農業小学校」に入学した。「農業は全くの素人だったが、田舎に引っ越してきて、畑仕事にあこがれていた」と話す熱心な姿を見て、福永さんがスカウトし、同社に採用したそうだ。

 福永さんは「農業経験の無い小野さんは、従来のやり方などの固定観念にとらわれず、全く違う発想でアイデアを出す。ある地域では、栽培する品種を1つに絞ることを提案して実践したことで、作業効率が大幅に向上し、耕作面積も拡大した」と喜ぶ。2人は「先祖から受け継いできた大事な農地を我々に預けた地主さんが『しっかり管理してくれてありがとう』と言ってくれる時が一番うれしい。今後も、効率良く収益の上がるやり方を模索していきたい」と話している。

2021年11月20日付808号15面から

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