【作品を前に話す寺川さん(本人提供)】

 「現代社会の、見えるものと見えないものの矛盾を投影した」。奈良県出身の染織作家、寺川真弓さんによる作品展が、11月13日ら21日まで三重県伊賀市上野福居町のギャラリー「アートスペースいが」で開かれる。入場無料。

「不条理さに心動かされた」目玉はインスタレーション

 京都教育大学で織を学び、関西の老舗呉服店や高級服地を扱う会社に勤務。著名なデザイナーのブランド品を手掛けるなど、長く服飾の仕事に携わってきたが、31歳の時、「必死に納品しても売れ残った製品はごみのように処分されていく『使い捨ての日本の消費文化』に疑問を感じた」ことをきっかけに仕事を辞めた。

 自宅に織機を組み立て、10年ぶりに織物に向き合うと、それまで仕事で培ってきた、素材や色柄など生地の風合いに対する感性が作品に結び付いていくのがわかったという。その後、カイコのまゆから糸を手繰りながら巻き取る「座繰り」の手法に興味を持ち、宮城県で出会った良質の糸が採れるカイコの一種「小石丸」を育て、その糸から織物を作るようになった。今ではそのえさとなる桑の木も育てている。

 今回の展示の目玉となる高さ3・5メートル、幅4・5メートルのインスタレーション(空間演出)は、東日本大震災の原発事故で立ち入りが制限されたことで思うように捜索できず、失った肉親の遺骨を今も探し続ける木村紀夫さんとの出会いや、沖縄・辺野古の海の埋め立てに、戦没者の遺骨も含む土砂が使用される不条理さに心を動かされたことがモチーフとなっている。

 時間は午前11時から午後6時(最終日は同4時)まで。

 問い合わせは同ギャラリー(0595・22・0522)へ。

2021年11月6日付807号20面から