【2人住まいの1週間分の食料品や日用品が詰められた「おたがいさま便」の段ボール箱=伊賀市平野山之下の社協事務所で】

保健所の対応切迫 民間の緊急食料提供に「助かった」

 新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言下にある三重県内では、入院や宿泊療養ができない人が盆明けから1000人を超え、8月末には4000人台に達した。伊賀地域でも新規感染者の数が途切れることなく、対応する保健所の業務が切迫している。自宅待機の単身者2人が不安な日々の様子と心境を明かした。

50代男性「1日2回聞き取りを」

 伊賀市内に住む単身赴任の50代男性は2度目のPCR検査で陽性が判明した。微熱と頭痛、味覚・嗅覚障害の症状が出たが、現在は回復。9月2週目から職場に復帰している。ワクチン接種は10月初旬に予約していた。

 外出ができないので、食料品など生活に欠かせない物品は友人らが届けてくれた。「保健所からの聞き取りは1日に1度だけ。軽症で済んだが、もし重症化したらと不安で、1日2回は連絡してほしかった」と話した。

 県では、自宅療養者らに対する聞き取りを1日2回としている。伊賀保健所は「件数があまりに多く、症状の重い人への対応を優先せざるを得なかった。全員に行き届かなくなっている」と打ち明ける。

20代男性 春から独り暮らし
感染で強まる孤独感

 就職で今春から同市内で独り暮らしをしている20代男性も、2度目の検査で感染が分かった。ワクチンは今月15日に接種する予定だった。慣れない土地で暮らし始めて半年。部屋では県から貸与されたパルスオキシメーター(血中酸素飽和度測定器)の数値を眺めながら不安な日々を過ごした。

 買い物の代行を頼める知り合いが少なく、熱や頭痛、のどの痛みなど感染の症状が更に孤独感を強めた。たまたま職場の関係者を通じて自宅待機者らに食料品や日用品の生活必需品が無償で提供される「おたがいさま便」のことを知り、さっそく申し込んだ。その日の夕方にはレトルト食品や缶詰、ゼリーやかゆ、飲料などが詰められた段ボール箱がアパートの玄関先に届いた。「まさか自分が感染すると思っていなかった。本当に助かった」

 「おたがいさま便」は市社会福祉協議会が実施する事業の一つで、受け付けの開始は今年2月。9月3日現在で計約30件の申し込みがあったという。対象は市内に住む陽性患者や濃厚接触者、検査結果待ちなど自宅待機を指示された人。世帯人数や家族構成に応じ約1週間分の食料品や紙おむつなどの日用品を非対面で指定の場所に「置き配」している。

 社協の担当者は「電話の声から不安を感じている様子がすごく感じられた。新型コロナ対策への助け合いの寄付を活用したこの緊急食料提供で、少しでも安心して過ごしてもらうことができたら」と話す。

市の保健師 県業務を支援

 昨冬の第3波以降、伊賀・名張両市役所に勤務する保健師の職員が伊賀保健所のコロナ対策支援に協力している。保健所職員だけでは手が回らなくなっているためだ。両市とも盆以降は毎日応援に出しており、自宅待機する市民への聞き取り、施設や事業所での検体採取などに当たる。

 伊賀市は5月末に県と職員の派遣で協定を結んだ。期間は来年3月末までの10か月間。盆以降は昼間で2、3人、夜間で7人から10人が隣接する県伊賀庁舎で業務に従事している。時間外などの手当は県の負担だ。一方、名張市は「市独自の支援」で県に協力を申し出た。市の業務に支障が出ないよう調整しながら1日に2、3人の職員を保健所に送っている。

 感染拡大の勢いはいまだ衰える様子がみえず、県全体の入院調整中や自宅療養の人数は9月1週目に入っても3000人台後半で推移している。行政関係者らによると、そのうち伊賀地域は200人前後だという。

2021年9月11日付803号23面から

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