万葉集の序文から引用された「令和」が新元号になったことで、「万葉集への関心が高まった」と話すのは、三重県伊賀市上阿波出身で大阪府高槻市在住の万葉書画家、福川良さん(84)だ。

 3月発刊の美術作品ライブラリー「日本美術コレクション2021」(麗人社)で作品が特集されているが、国際的にも著名なライブラリーに書画が選ばれるのは初めてという。「書画は芸術のジャンルとしては確立されていないが、六十余年この世界でやってきて良かった」と話す。

 同著に掲載されたのは、万葉集巻五の「梅花の宴」や「山上憶良の子らを思う歌」と題した作品など13点。当時の風俗がうかがえる色鮮やかな絵に、若いころ「前衛書道」で学んだ独特のタッチの書が添えられている。

 同著で推薦文を書いているフランス芸術家協会のアラン・バザールさんによると、「和紙などの伝統的な素材を支持体にして、墨や顔彩を自由に操る書家で、いにしえの和歌の世界へ我々を誘う」と評している。

ゆかりの地巡る

 上野高校出身で、当時から古文に興味があり、大阪成蹊短期大学の時に万葉旅行に参加。万葉学者の犬養孝さんの「万葉バスツアー」では、全国のゆかりの地を巡った。38歳の時、文人の故・早川幾忠さんに短歌を学ぶ。スケッチが得意だったこともあり、書画を勧められたという。

 「万葉集には庶民の喜びや嘆きなどが詰まっていて、ドラマがある」と福川さん。35歳の時から多くの生徒と書や絵を楽しんできた「微笑庵書画塾」は、高齢のため昨年9月に閉塾した。しかし、44歳から毎年開催している個展「おりょうの万葉浴」は、大阪では12月に40回目を迎える。

 伊賀市では8月24から29日の午前11時から午後5時まで、同市上野福居町の「アートスペースいが」で開かれ、約90点が出品される予定だ。「多くの方に来て頂き、万葉の世界に浸ってほしい」と来場を呼び掛けている。

 「日本美術コレクション2021」は名張市立図書館にも1冊寄贈され、閲覧が可能。

 問い合わせは福川さん(072・694・3123)まで。

2021年8月14日付801号14面から

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