【子牛にミルクを与える数田さん=伊賀市甲野で】

 地域ブランド「伊賀牛」の繁殖から肥育までを地域内で完結させる体制づくりが三重県伊賀市内で取り組まれている。乳牛に黒毛和牛の受精卵を移植・種付けし、繁殖農家で4月に誕生した生後4、5日の赤ちゃん牛を託され、約3か月間哺育した同市甲野の数田直哉さん(43)(数田牧場)が、7月に肥育農家へ初めて引き渡した。

関係者の期待大

 取り組みの背景は、肥育農家が市場で取り引きする素牛価格が高止まりし、経営を直撃していることや、減少傾向にある肥育頭数の維持や増加につながるよう、市が昨年度に繁殖、素牛、肥育農家らで組織する協議会に委託し、今年度からモデル事業を始めた。素牛は通常、生後9か月前後まで飼養するケースが多いが、生後約3か月の「スモール素牛」の場合、購買費が抑えられて肥育農家の負担軽減につながることから、地元関係者の期待も大きい。

 数田さんは2代目で、23年前から家業に従事している。牧場では繁殖牛と肥育牛を飼養していたこともあり、以前から子牛の哺育と育成に興味を持っていた。モデル事業では、乳牛約500頭を飼育するヤマギシズム春日農事組合法人(同市川東)が地域貢献として協力。20頭に種付けし産まれた黒毛和牛を月3頭ペースで数田さんの牧場に供給、地元の肥育農家に引き渡すまでの間、専用の牛舎で9頭前後の面倒をみている。

 生後3か月までの間、一番気に掛けるのは病気など子牛の健康面だ。生まれて間もない時期は免疫力が低く、事故率が高いという。伊賀牛の肥育農家はこれまで、九州地方など県外の市場で子牛を購入していた。数田さんは離乳したばかりの子牛に1頭ずつ人工乳を与えるなどし、日々の体調管理は目視や触手で常に把握して、雌2頭を7月20日に引き渡した。

繁殖農家から初の引き渡しを記念した式典で子牛を抱く数田さん=同

2021年8月14日付801号17面から