【(左写真)スマートフォンで撮影した産卵行動中のモリアオガエル3匹の写真を見せる橋本さん(右写真)卵塊を指差す橋本さん家族=伊賀市霧生で】

安心の産卵場所?

 三重県伊賀市霧生の会社員、橋本和平さん(62)方のドウダンツツジの鉢植えは、3年前からモリアオガエルの産卵場所になっている。「ここで産めば安心だ」と代々伝わっているのか、今年も6月に帰ってきた。孵化し、成長していく様を橋本さん一家が温かく見守っている。

火鉢の水の中に生まれ落ちたオタマジャクシ

 「コロロロロ、コロロロロ」。2018年6月、橋本さんは玄関の外から聞き慣れない鳴き声がするのに気付いた。「田んぼのカエルとはどうも違うな」。そのカエルは、玄関横にある高さ1㍍ほどのドウダンツツジの鉢植えに、いつの間にかソフトボールのような大きな白い泡の塊を作った。

 橋本さんが種類を調べると、モリアオガエルだった。通常は池や沼など水面上にせり出した木の枝に卵塊を産み付け、孵化したオタマジャクシは水中に落ちて育つとされる。しかし、橋本さん方のドウダンツツジの下に水はなかった。橋本さんは使っていなかった火鉢に水を貯めて卵塊の真下に置き、オタマジャクシを受け止めることにした。数日後、火鉢の中で元気に泳ぐ姿を確認。そして、いつの間にか姿を消していた。

 翌年、翌々年もモリアオガエルはドウダンツツジに卵を産み付け、橋本さんは火鉢を置いてオタマジャクシを受け止めた。火鉢では狭いだろうと、今度は家の隣の古井戸に放して成長を見守った。

3段重ねを撮影

 今年は6月17日の朝、橋本さんが出勤前にドウダンツツジに目を移すと、産卵行動中の大中小3匹と初めて遭遇。橋本さんは思わず、スマートフォンで3段重ね状態のモリアオガエルを撮影した。3匹が作った卵塊から生まれたオタマジャクシも、9日後に火鉢で無事にキャッチ。橋本さんは「大きく育って、来年もまた戻ってきてや」と成長に期待を寄せる。

 県上野森林公園職員の渡辺直人さんによると、モリアオガエルの産卵には水たまりが必須で、毎年同じような場所で産卵することが多いという。「サケのように産まれた場所に戻ってくるわけではないが、条件が良い場所に集まってくる。住人が水たまりを用意してあげたことで、更に条件は良くなっている」と話していた。

2021年7月10日付799号2面から

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