【出版した本を手にする板野さん=名張市夏見で】

 三重県名張市夏見の寺田病院で院長を務める板野聡さん(67)は、医師として患者と向き合った日々の思いをつづったエッセー「医局で一休み」(22世紀アート)をこのほど出版した。

 岡山県出身の板野さんは、大阪医科大学を卒業後、岡山大学医学部付属病院などに勤務。1987年から寺田病院に勤め始めた。

 本作は「星になった少女」「伊達の警察医日記」「看取り請負人」に続く4作目。医学雑誌「臨床外科」で2005年から毎月掲載していた短編191編を上下巻に分けて収録。診察する中で患者や家族、恩人たちへのあふれる思いを書き記した。

 第62回のタイトル「生んでくれてありがとう」は、胃がんで危篤状態になった母親の最後をみとる2人の子どもが、母親の手を握りしめながら叫んだ言葉。第31回「人はなぜ山に登るのか」では、仕事を山登りに例えた人生観をユーモアを交えてつづっている。

 消化器外科医として数多くの手術を経験した板野さん。これまでにも多数の学術論文を書いてきたが、「患者や医療従事者たちの葛藤や喜びは、論文では伝えられない」とエッセーの執筆を決めたという。

 四六判で、上巻が234ページ、下巻が294ページ。店頭販売はなく、電子書籍とインターネット通販で購入可能。定価は電子版が各1000円(税込み)で、紙版が2046円(同)。

 板野さんは「患者と向き合う一生懸命な医師たちを身近に感じてもらえたら」と語った。

2021年6月12日付797号8面から

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