【新拠点の名張支店を紹介する奥中社長=名張市夏見で】

海外への発信基地

 国内はもとより海外3工場で革製かばんなどの製造・販売を手がける株式会社丸富商会(本社・大阪市)が6月初旬、三重県伊賀市内にあった事業拠点を名張市夏見に移転し、多角的な機能を備えた名張支店としてオープンした。

 支店は銀行だった建物を全面改装したもので、敷地面積は約900平方メートル。通りに面した1階には、かばん作りの楽しさを体験してもらう「工房(ワークショップ)」と自社製品を販売する「フラッグショップ」が隣接、奥に生産ラインがある。

 2階は海外工場の技術者を研修するための部屋や展示会などが開けるほどの広いスペースがある。

「事業拡大・技術指導・品質管理の核」

 同社の奥中利直社長(70)は「製造業としての基本的なものづくりを維持し、技術を温存し育てていく拠点であり、バングラデシュ、ミャンマー、中国にある3合弁会社に対して、技術や情報の発信基地になる」と新拠点の狙いを話す。

 同社は1963年に創業し、国内従業員は24人。昨年は新型コロナの影響で販売は約3割ダウンしたが、年商はここ数年、業界内でも上位で推移している。海外3工場での生産ウエートは85%を占めるが「残りの15%の国内生産こそが重要で、海外への事業拡大と技術指導、品質管理の核になっている」と奥中社長。

多角的な機能を備えた名張支店=同

 具体的には、日本で新製品のサンプルを作り、パターンや作り方をインターネットで海外工場と情報共有、すぐに生産に反映させるという。「ネットを通じた情報発信は、場所を選ばない。東京や大阪などの大都市ではなく、地方都市・名張が世界への発信基地になれることを実証したい」と意気込む。移転を機会にCAD(コンピュータ支援設計)を導入し、キャリア女性や服飾かばん専門学校の卒業生などの新しい人材を確保した。現在はバッグの製作補助やショップでの接客のためのパート従業員を募っている。

 「工房」では、好みの材料を選んで小銭入れなどの小物バッグを1、2時間で作り上げる教室を開催する。表通りからも見えるガラス張りで、「家族連れなどが気軽に楽しめるオープンな雰囲気にしたい」という。

 同社は現在、OEM(相手先ブランド)商品を中心に生産しているが、自社オリジナル商品の開発にも力を入れている。2017年に市場投入し、Web販売を始めたオリジナル商品の「Mahl(マール)」は高級な素材を使い、女性も男性も持てるカジュアルなかばんとして人気だ。

ASEAN軸に市場開拓

 今年1月、コロナ禍で奮闘している医療、介護、福祉関係者に役立ててもらおうと、抗菌処理を施したマールの手提げバッグを300点、名張市を通じて寄贈した。

 今後も同社独自のオリジナル商品の企画・開発に力を注ぎ、大きな経済成長が期待できるASEAN(東南アジア諸国連合)を軸に、マーケットを開拓していく考えだ。奥中社長は「2年前から構想してきた多機能な事業拠点がやっと完成した。従業員が将来に夢を持てる持続可能な成長企業を目指し、地元の活性化に貢献していきたい」と抱負を語った。

 名張市での「まん延防止等重点措置」が延長されるなど、新型コロナの感染が拡大する中、十分な感染防止対策を施して新拠点をオープンさせたが、感染が収束した後、改めてオープンイベントを行う予定という。

 問い合わせは同社(0595・41・2156)まで。

2021年6月12日付797号4面から

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