「お水取り」で知られる奈良の東大寺二月堂の修二会で使うヒノキのたいまつを名張市から運ぶ、伝統の「松明調進行事」が3月12日にあった。新型コロナウイルス感染拡大を受けて行事を省略し、恒例の学生の参加や、徒歩での三重・奈良県境の笠間峠越えなどが見送られた。【たいまつを運び田園地帯を進む一行=名張市安部田で】 〈YouTubeで動画を見る〉

 同市赤目町一ノ井の極楽寺に早朝から集まった住民組織「伊賀一ノ井松明講」の講員や市民団体「春を呼ぶ会」のメンバーら約80人は、法要で道中の安全などを祈願した。同寺の中川拓真住職は「疫病退散の願いも乗せ、奈良まで無事に運んで頂きたい」とあいさつした。

 一行は、「身体健全」「家内安全」などの願いが書き込まれた重さ約30キロのたいまつの荷を担ぎ、ほら貝の合図で出発。田園地帯を歩いて宇陀川を渡り、同市安部田の酒造場前まで約2キロの道のりを交互に担いで運んだ。

 同所からは計5荷のたいまつをトラックに積み、奈良に向かった。徒歩での峠越えがなかったのは、大雪の影響を受けた2000年以来20年ぶりだという。
 
 杉本陛講長は「行事の一部が変更になったが、772年の伝統を絶やすわけにはいかない。こういう時期だからこそ、人々の思いを東大寺に届けたい」と話した。