【自作の能面を紹介する山本さん=伊賀市上野徳居町で】

 三重県伊賀市上野徳居町の能面師、山本童悦(本名・悦郎)さん(87)の能面作品展が4月13、14日の午前10時から午後4時まで、同市上野丸之内のハイトピア伊賀で開かれる。山本さんは「今回が最後の個展になると思う」と話す。

 山本さんの地元は上野天神祭で鬼行列を担っており、幼いころから面に触れる機会があった。古くなった面の修復に貢献したいとの思いから56歳で能面打ちを開始。58歳の時にプロの能面師に教わり、60歳で師匠から刻号をもらい独立した。

 能面師は、室町時代に制作された「本面」を忠実に再現した「写し」を制作する。のみや彫刻刀などでヒノキの木材を彫り、面の裏は漆を塗り、表は貝殻を粉にした「胡粉」や顔料などで何度も塗り重ねて彩色する。

 神や鬼、霊など、人でない者を表現する能面は、単なる彫刻ではなく役者が演じることで真価を発揮する。山本さんは「能楽師さんに認められ、舞台で使われる面を作るのが一番難しい」と話す。

「どれも我が子のよう」

 制作時のわずかな狂いは、面の表情を一変させてしまう。一からの彫り直しを納得行くまで何度も重ねるという山本さんの場合、1つの面を打つのに少なくとも100日は要するという。「これまで多くの面を打ったがどれも我が子のようで、見ると当時の苦労を思い出す。思い通りの出来になることはそうそうない」と話す。

 8年ぶりとなる今回の個展では、伊勢神宮の式年遷宮奉祝能で使われた「白式尉」や、伊賀上野薪能で使われた「小面」「増女」、各地の新作能面展で入賞した作品など多彩な約80点が並ぶ。山本さんは「少しでも能に興味を持って頂けたらうれしい」と呼び掛けた。

 13日午前10時からは、喜多流能楽師の長田郷さんが能楽と能面について講演する。

 問い合わせは山本さん(090・8136・0094)まで。

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