【「海外市場に売り出す」と語る東山さん=伊賀市で】
本場・英国で評価
「『酒ジン』という新しいカテゴリーを作りたい」。日本酒を蒸留して造ったジン「これ、曰く。酒・じんHIROSE」を前に、明るく話す東山さおりさん(56)。大麦やライ麦などの穀物を蒸留して作る一般的なジンと異なる日本酒ベースのジンの販売に取り組むため、2021年に設立した株式会社「プロジェクト・ラボ」(三重県伊賀市広瀬)の社長だ。
同社は地域資源である伊賀米からジンを作って世界市場で勝負する取り組みが評価され、農林水産省東海農政局から地域活性化の優良事例を選定する25年度の「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」のビジネス・イノベーション部門に選ばれた。
同市丸柱出身の東山さん。市職員として地域福祉の仕事を担当する中、広瀬地区で18年から、都会の人の農業体験や昔ながらの結婚式などで地域に「ワクワクするようなにぎわい」を起こしている株式会社「七転八倒」に興味を持ち、その活動に寄り添いながら、周辺地域にも活動を広げるプロデュース役としてプロジェクト・ラボを立ち上げた。
「農業などの1次産業に価値を付け、農産物を加工・販売して6次産業化を目指す」と考えた東山さん。地域内に炊き立てご飯と旬野菜を提供する「古民家カフェ365nichi」を開業するとともに、伊賀米に新しい価値を付けた商品で世界市場に乗り出そうと考え、目を付けたのが世界的に人気のあるジンだった。
「日本で初めてジンが作られた長崎で、伊賀米を醸造してもらう」。東山さんの熱意に賛同してくれたのは長崎県佐世保市の梅ヶ枝酒造だ。
まず、伊賀米から日本酒を醸造する。そこにジンに不可欠なスパイスのジュニーパーベリー(西洋ネズの実)とアマナツ、レモン、桜の枝と花など三重県産有機栽培果実で風味付けし、更に蒸留してアルコール度数を上げるというひと手間を加えている。
22年には、ジンの本場、英国の品評会に出品し金賞を受賞した。これを機に、ホテルオークラ京都(京都市)や志摩観光ホテル(志摩市)などの有名ホテルでも扱ってもらえるようになった。
更に東山さんは約600の酒造を巡り、「国内の酒造が減少している中、酒ジンで新たな活路を見出したい」と熱心に説明。「酒造りについては全くの素人なので、最初は相手にしてもらえなかったが、苦労が実り賛同する酒蔵が12蔵になった」と喜ぶ。
原料の伊賀米を生産する農家も「七転八倒」のメンバーだけでなく、地元の川北・広瀬地区の農家18軒も加わった。24年には、梅ヶ枝酒造を始め佐賀県鹿島市の光武酒造場など4者で一般社団法人「日本・酒じん協会」を設立した。
今年1月末にはあべのハルカス近鉄本店(大阪市)で酒ジンの催事が開かれ、同社の「HIROSE」の他、光武酒造場の「赤鳥居」などが出品され、注目を集めたという。

透明の瓶に三重県の地図と稲穂をあしらった酒ジン「HIROSE」。「今までのジンとは違い、日本酒のまろやかさと芳醇な味わいに、かんきつ系の爽やかな香りもあって、女性もロックで楽しめる」といい現在、米国、タイなど9か国で商談が進んでいる。「現在多くのプロジェクトに参画してくれている学生とともに、農業の6次産業化を更に進めていきたい」と東山さんは目を輝かせた。
酒ジン「HIROSE」は、伊賀市上野農人町の菊野商店で購入できる。
















