【「島ヶ原温泉やぶっちゃ」の空撮写真(提供)】
三重県伊賀市島ヶ原の「島ヶ原温泉やぶっちゃ」が生まれ変わる。全国に569事業所を展開している社会福祉法人創生会(本社・福岡市)が今年の4月に事業を引き継ぎ、運営を開始した。「観光と福祉を融合させた地域再生の事業モデルを構築したい」と話す、創生会法人本部の阿部哲也部長(57)に今後の構想を聞いた。
「やぶっちゃはこれまで温泉がメイン。レストランがあり、産直市場とキャンプ場を運営していたが、経営が厳しかったのも事実」と話す阿部さん。その再建を図るべく、本社から派遣されたのだ。
「島ヶ原は伊賀市の西の玄関口で、市の中心部まで車で15分ほど、奈良や京都にも近い距離にある。観光面での立地条件は最高といえる」と話す阿部さん。また「伊賀には全国的に知られる『忍者』という訴求テーマがあるが、これに執着し過ぎると若者などは集まらない。ここだけの魅力的な仕掛けを作ることが必要」と強調する。
まずレストランの改革だ。「やぶっちゃは誰もが温泉をメインに考えるが、私の感覚は違っていて、とろっとろの美肌温泉もあるけれども、本来はレストランだと思う。伊賀でランチを食べに行くという時に、やぶっちゃが選択肢に入ってくるようにしたい」と言う。

レストランで出すメニューは伊賀牛をベースにした定番に加え、全国からおいしい素材を積極的に仕入れるとともに、素材を全てゼロベースで仕込んで本物の味を追求しているという。例えば博多明太子や北海道のトウモロコシをベースにした新メニュー、地域の店舗と連携して共同開発した伊賀牛バーガー、オリジナルなコーヒーをブレンドして提供する、などだ。
有名レストランや海外で経験のある洋食の得意な料理人をスタッフに加えた。また、インスタ映えするような若者の人気メニューも考案中。「毎日、レストランで出すメニューは料亭並みにおいしいと実感している。これを手頃な価格で提供したい」と話す。
次の改革は、週末に催すイベントだ。子どもやファミリー、高齢者も楽しめるさまざまなイベントを毎週継続して提供していく。「週末のやぶっちゃは楽しい」と評判になるネタを散りばめるという。9月の週末は、アユのつかみ取り、ピラティス教室、竹あかりのライブイベントなど、多彩な内容だ。
10月にオープンするデイサービス事業は、まさに創生会の得意分野で、高齢者福祉を実現するための改革だ。約10年間使っていなかったプールや健康器具のある健康づくり棟を現在改装中。従来の家族風呂を車椅子のまま入れる介護用風呂に、トイレも福祉用に改装する他、機能訓練室、交流サロンなども整備している。利用者は35人からスタートし、いずれは温泉、プール活用のリハビリにも力を入れていく方針だ。
阿部さんは「高齢化が進む島ヶ原にあって地域活性化の1丁目1番地といえるやぶっちゃを元気にしたい。伊賀市、島ヶ原地域まちづくり協議会、近隣住民の方と連係し、高齢者だけでなく子ども、子育て世代、地域住民らで常ににぎわう交流拠点にしていきたい。70人の従業員の協力を得ながら、いろいろ仕掛けてきたことが徐々に形になっており、今後の展開が楽しみでワクワクしている」と笑顔で語った。