【高校生らに朗さんの写真を見せる大西さん=名張市東町で】

「車は時に凶器となる」

 交通事故で当時31歳だった息子を亡くした大西まゆみさん(65)=三重県津市=が7月16日、名張市東町の県立名張高校で1年生約200人に向けて講演し、事故の経緯や被害者遺族の悲しみ、法改正への強い願いなどを語った。

講演する大西さん=同

 2018年12月29日、法定速度60キロの津市の国道23号を時速約146キロで走行する乗用車が、道路を横断したタクシーに衝突。タクシーの運転手と大西さんの長男・朗さんを含む乗客3人の計4人が死亡し、乗客1人が重傷を負った。

 大西さんは講演で、「現実に自分の身に降りかかってくるのかと、信じられない思いだった」と振り返った。事故直後から亡くなるまでの6日間、生死をさまよう朗さんを病院で見守り続けた母としての心情も語った。

「法に二度殺された」

 乗用車の運転手は、最大で懲役20年となる「危険運転致死傷罪」で起訴されたが、司法の判断は「過失運転致死傷罪」で、量刑は懲役7年だった。

 「なぜ146キロの暴走で4人を死亡させ、過失運転になるのか。法律に二度殺された。こんな事件で、こんな法律で泣く人を今後なくしたい」。大西さんは、危険運転致死傷罪の適用要件のあいまいさに問題意識を抱き、他の被害者遺族とともに署名活動をしたり要望書を提出したりと、法改正を訴え続けた。こうした運動を受け、危険運転致死傷罪の要件見直しが、今春から法制審議会で議論されている。

 講演の終盤、大西さんは生徒たちに向けてこう呼びかけた。「ほとんどの人が車の免許を取得されると思う。便利だが、車は時に凶器となる。交通ルールを守り、被害者にも加害者にもならず、素晴らしい人生を全うしていただきたい」

 今回の講演は、県警とみえ犯罪被害者総合支援センターが主催する「命の大切さを学ぶ教室」で行われた。

- Advertisement -