【市議会全員協議会で中学校給食の延期を表明する北川市長(右から3人目)ら=名張市役所で】
三重県名張市は5月27日、2027年度中を目指していた中学校給食の開始を延期する方針を示した。北川裕之市長は同日午後の会見で、「市民の皆さんとの約束。時間がかかっていることは忸怩(じくじ)たる思いで、申し訳ない気持ちでいっぱい」と述べ、「大きな優先課題。実現する考えは変えていない」と強調した。
中学校給食は、県内29市町で未実施が同市のみ。2016年に保護者や学識経験者らが市に意見書を提出後、市教委が実施に向けた方針を示したが、空調設備の導入を優先して計画が停滞した。

「中学校給食の導入」を公約の1つに掲げて22年4月に初当選した北川市長は同6月の市議会で、27年度中の開始を目指すと表明。23年8月に実施方式をセンター方式に決定し、24年2月には事業手法を官民連携のPFI方式、給食センターの建設予定地を同市青蓮寺と定め、事業者を募って施設を建設する目前の段階まで準備を進めていた。
市は昨年11月に発表した中期財政計画で、28年度には累積赤字が最大51億円に達する恐れがあると試算。その後に進めた行財政改革や伊賀南部クリーンセンターの機器更新事業費の精査などを反映して改めて公表した試算では、28年度の累積赤字が22億7300万円まで圧縮できる見込みとなったが、依然として財政再生団体への転落のリスクがある状態としている。
地方独立行政法人への移行を今年10月に控える市立病院では、コロナ禍以降に増加していた看護師の離職が24年度は29人に上り、看護師不足に伴う病床数の制限が経営を圧迫。28年度には約13億円の資金不足が発生する見込みで、当面は一般会計からの財政支援が必要だという。
中学校給食は導入後に年間2億円から3億円規模の持続的な負担が見込まれ、事業を着手した場合、市立病院への財政支援が必要となる中で今後の財政運営が困難になると判断した。北川市長は事業着手の延期期間について「無期限というイメージではない」とし、29年度までの間に改めて判断するとしている。
保護者から落胆や怒りの声
中学校給食の延期を知った、市内に住む保護者に話を聞いた。
市内の学校に通う小学4年生の長男がいる母親(39)は「北川市長が選挙で掲げた公約なので、期待していた。我が子が中学に入学するころには給食だと思っていたので、非常に残念」、中学1年生の長男と小学4年生の次男がいる母親(38)は「弁当は本当に大変で、米も値上がりしてお金がかかる。財政的に無理だと薄々は思ってはいたが、(発表を知って)腹が立った。伊賀市と合併したらと思った」と話した。
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