【田んぼを背にホッケーのスティックをクロスさせる西堀さん=伊賀市大野木で】

 田んぼとホッケー場を全力で駆け巡る若者がいる。三重県伊賀市東高倉の西堀颯飛さん(20)は、平日は農業法人で米作りなどに励み、週末には社会人ホッケーチーム「三重クラブ」でディフェンダーとしてプレー。SNSでは自ら「ホッケー農家」と名乗り、農業とスポーツ、2つのフィールドで汗を流している。

名張市内のホッケー場でプレーする西堀さん(提供)

 ホッケーとの出会いは高校時代。名張青峰高校で創部翌年のホッケー部に入部し、スティックでボールを操る感覚に魅了された。「新鮮で何より楽しかった」と振り返る。

 人数不足やコロナ禍の逆風にも負けず、3年生の時にはキャプテンを務め、卒業後も情熱は冷めなかった。現在も、名張市を拠点とする三重クラブでレギュラーとして活躍し、関西リーグ連覇を目指している。

直進アシスト機能付きの田植え機を前進させながら苗の補充をする西堀さん=伊賀市古郡で

 もう一つの舞台は、幼少期から通い慣れた田んぼだ。祖父と一緒に土に触れたのが原点だが、近年は見慣れた田園風景が次第に太陽光パネルに変わっていく現実に胸を痛めてきた。高校卒業後は三重県農業大学校(松阪市)に進学し、祖父の背中だけでは見えてこなかった農作業の意味を、一つひとつ学び直した。

 今春には、先進技術を採り入れた「スマート農業」を実践する伊賀市内の農業法人に就職。限られた人手でも高い生産性を目指す現場で、日々汗を流している。目標は5年以内の独立・起業で、既に職場にもその意志を伝えているという。

伊賀の田園風景を次世代に

 昨今の米価高騰については「むしろ今までが安かった」と語り、農家の高齢化が進む一方で高額な機械の買い替えができずに離農する人も増えていると指摘する。「外国産米の流入や買い占めによる価格変動も心配。でも、伊賀の美しい風景を次の世代に残したい」

 ホッケーは攻守の切り替えが激しいスピード感あふれるスポーツで、低い姿勢を保ったままのドリブルや急な方向転換が求められる。「農業もホッケーも、いかに腰に負担をかけずに続けられるかがカギになる。体を大切にしながら、この伊賀地域でずっと続けていきたい」と、真っすぐな目で未来を見据えている。

- Advertisement -