【イランの観光地で国内からの旅行者と記念撮影する杉森さん(左から2人目、提供写真)】

 「本当の良さや美しさ、それに実情も伝えられたら」。10年ほど前、世界を巡る旅の途中で訪れたイランで人々の温かさや伝統、芸術の魅力に触れた三重県名張市滝之原出身の杉森健一さん(35)=東京都在住=は、イランと世界をつなぐさまざまな仕事の傍ら、SNSで「イランの良さを伝える杉森」として情報発信に努め、昨秋には自身が見て感じたイランの名所や歴史、芸術などを紹介する書籍を出版した。

同級生の縁

 名張西高(現・名張青峰高)から関西外国語大に進み、広告代理店に就職して数年後、「世界一周する」という友人に触発され、自身も1人で各国を巡る旅に出た。1年間で20か国以上を訪ねる中、中東の航空会社に勤務する高校時代の同級生の縁でイランに招かれ、現地の人たちから親切にもてなされ、多くの出会いを得たことが強く印象に残った。

 帰国後は海外旅行情報を発信するメディアに就職し、2020年に独立してペルシアンアートのオンラインショップを開業。現在は旅行情報の発信やイベント企画なども手掛けている。ショップではイラン国内で活動するクリエイターの作品を中心に取り扱い、自身も特に好きだというタイルアートのスマホケースなどが若い世代に人気があるそうだ。

寄贈した著書を生徒会長の坂元快成さん(右)に手渡す杉森さん=名張市百合が丘東6

 近年、緊迫するパレスチナ・イスラエル情勢、イスラエルとイランの対立などが報じられる一方、「自分が体感したようなイランの日常や文化・芸術などが日本で知られる機会は少ない」という思いも込め、「ペルシア文化が彩る魅惑の国イラン」(イカロス出版、160ページ、税込み1980円)を著した。

母校へ寄贈

 今年も4月中旬にイランへの渡航を計画したが、日本のイランに対する危険情報が「渡航中止勧告」に引き上げられ、やむなく中止。5月初旬に地元に戻った際、名張青峰高へ著書を寄贈し、水守智士校長らと歓談した杉森さんは「視野を広げたり英語を使えたりすれば将来の選択肢が増え、いろんなものを知ることができる。この本を通じて可能性を広げてもらえたら。情勢が落ち着けば今後も現地へ赴きたい」と話した。

 杉森さんの著書は「アマゾン」などのインターネット通販サイト、ネット書店などで購入できる。

2024年5月11日付867号2面から

- Advertisement -